読書の腕前は

 今更ながら岡崎武志「読書の腕前」を読む。今更というのはこの本がすでに七刷を数えているからだ。私の購入したのは六刷だったが結構読まれているようだ。氏の本は他にも読んだことがあるのだが、最近増えているこの手の読書本は実は買わないようにしている。読むとそこで紹介されている本を読みたくなってしまうからということもあるし、自分にとってどうでも良い本を素晴らしい紹介の仕方をしているという時もあるからだ。今回も中で紹介されていた本の中で何冊か読んでみたいと思う本があり購入したのだが、読んでみたらそれほど面白いとは思わなくてすでに古本として棚に並んでいる。やはり本は自分の目で見て気に入ったものを選んで買うというのが一番である。この本でもそのように書いている。

 岡崎氏の書く文章の面白さは軽妙さとその好奇心の深さにある。それが意外な事実を知らされたり、なるほどと妙に納得する部分があり、興味を覚えるところでもある。好奇心の深さというか実はその多様性でもある。一つの事柄から興味がどこへ飛んでいくのかわからない面白さであり、それはやはり本を数多く読んでいく中で得られる豊富な知識からくるものなのか単に趣味的な好奇心の強さからくるものなのかは知らないが、常に驚かされる点である。長く古本の世界に関わってきたと同時に業界に女子が参入してきたことを早くから注目評価し、一箱古本市などを開催奨励してみたりと古本業界全体に大いに貢献している。また氏は自分の店は持たないが、棚を借りて自ら古本を売り捌く古本屋でもあるのだ。

 本は当初2007年に新書版で出されたものが、2014年に文庫版として出され、現在も増刷されているということである。したがって内容的には古くなるのだが、さほどの違和感は感じない。ブックオフやネット販売の利用法なども含めてむしろ新鮮な感じも受ける。古本だけではなく読書家の生活が面白くリアルに語られているからである。最後の方では氏お勧めの本がかなりの数が紹介されており、これはこれで納得できてしまう。そして何とこの本の帯は芥川賞を受賞したピース又吉氏の言葉だったのだが、どこかに捨ててしまったようで今は付いていない。敢えて捨てた訳ではないのだが。