本が売れないというけれど

  永江朗という人の「本が売れないというけれど」という本を読む。最近良く言われていることだが、それらを時系列にデータを示して再認識する内容である。2014年の本なので状況としては今もそれほど大きく変化していることはないと思われる。目次の見出しを読んでいくととても分かりやすい。まず「街から本屋が消えていく」というところから始まる。データで言うとここ15年で半減しているのだ。多くは地方の中小書店で、どうなったかというと駅前や街中の書店が消えて郊外型のショッピングセンター内に大型チェーン店ができるということになる。これは書店だけではなく小売店全体でも同様で、街の商店街がシャッター通りになっているのは全国どこでも見られる状態である。今はさらに大きなショッピングモールが次々と出来ているが、これも20年30年経てば大型廃墟となるのではないかと思う。

 次に「活字離れといわれても」ということになるのだが、データで見ると読書率はここ15年でほとんど変わらず横ばいである。要するに本が売れていないというのは書店と出版社の問題になる。出版点数は雑誌を中心にしてほぼ倍増であるにも関わらず、売上は変わらず増えていない。同じような本や雑誌が出ては消え、書店では棚に並びきれないという状態なのだ。そしてこの時期に出てくるのがブックオフとアマゾンである。本は新刊ではなく中古で買い、書店ではなくネットで買うということになる。加えて、私の周囲でも図書館で借りて読んでいる人が多いが、本を持たない、家に置かない人が増えているのであり、本を読まない人が増えているということではない。

 こうした状況を見ると確かに本は売れない訳だが、ではどうしたらいのかという提言もなされている。出版制度や書籍販売の見直しや新しい書店像を提示しているが、まだ大きな変化が出てきていないのは業界全体の危機感がそれほどでもないということなのだろうか。最近出てきているひとり出版社やブックカフェ、ギャラリー、一箱古本市など、実際に運営している若い人達の方が大きな可能性を持っているような気がする。一つだけ気になった言葉を上げれば、売れているものにはずれはないだろうという考えもあるが、他人の嗜好で自分の行動を決めていることに変わりはない、というものだった。