古本屋を始めて思うこと

 とにかく営業時間はできるだけ守るようにしている。自分が経験したことだが店を訪ねても閉まっていた時の無力感は何とも言いようがない。したがって自分で決めた曜日と時間は開けるようにしている。それでもいつも開いていないと言われることがあったりするのでこれは頑張って続けていくしかないのだろう。一人で店番をしているので用事があって一時的に閉める時には張り紙をして出ていき、用事を済ませるとすぐさま引き返すのだが、だからと言って店の前で待っている人がいることは無い。またお客さんが来ないというのは実に難問で、要するにその間に何をすればいいのかということになる。何もやることが無い訳ではなく、全く自分のことをしていても構わないという訳でもないから、塩梅が難しい。

 最近本が売れないということはよく聞く言葉である。小さな新刊書店でも大きな書店でも古本屋でもそれは同様で、いくら本の数を多く揃えてもお客さんの欲しい本はなかなか要望通りにはならない。そうなると当然ネットで注文される人が多くなり、まして家まで配達してくれるので、多少値段が高くなるかもしれないが。その方が便利で確実に欲しい本が手に入る。古本屋には特に欲しい本があまりないということになる。

 古本屋は店にある本を買ってもらうしか術がなく、どこの店でもいかに安く多く本を仕入れるかで苦労するようだ。古書組合はどこの県にも有るので組合で開かれる仲間内の市場で取引したり、お客さんからの買い取りで本を調達する。でも思ったような本が手に入らないのが実情のようである。また売れない在庫をいつまでも抱えていても仕方ないので、値引きをする、ネットで販売する、古本市に出す、組合の市場に出す、それでも売れなければ廃棄となる。とにかく本を回すことを考えなくてはならない。これで商売するということは大変なことである。

 本屋にとって一番厄介なのはいま本が必要とされていないのではないかということだ。昔ほど本が売れないのは本を読まないのではなく本を買う必要がないからということではないか。図書館で借りる、アプリで読む、本屋で立ち読みするなど結局買うことをしない。昔あった貸本の方が良いシステムなのかもしれないとも思う。でも棚の数には限度があるし、一度読んだらそれで済んでしまう訳だからほとんど利益はないだろうと考えられる。

 さて、ここ12年、色々な他の古本屋を見学してきた。回ると不思議なことにどこの店にも必ずと言ってもいいほど同じ本が有る。これが結構目につく。売れそうな本と言うことで仕入れるのだろうが、棚に残っているということはあまり需要がないということなのか、でも皆さん不思議と持っている。結局ネット販売を中心に考えていけば必要だと言うことになりのか。これでは消えていく地方の本屋と同じことのような気がするのだがどうだろうか。限られたスペースの中で、やはり自分の好みで棚を構成していくしかないということになるのだがはたして現状はどうだろうか。