昔の名前は忘れました

店を始めようとして店舗物件を探している時に、街の中を歩き回りながら、なかなか素敵な店がることを知った。時々は立ち寄って、店内を眺めながらお茶を飲んで、その雰囲気を味わっていた。どこも若い人達が頑張っているという様子で好感が持てる店である。結構色々な店が有って面白い街という気がした。ところが最近になって、その中の三店が閉店してしまった。確かに行列のできるような感じではなかったが、それなりに繁盛しているという感じだったから意外な気がした。何回か行くうちに少しずつ話をするようになる。それぞれ経営的には大変な思いをしているようで、それは良くわかることだ。店を閉めるという段階になると、やっと解放されるというような思いになるのか、それまでの疲弊した顔から少し和らいだ表情を見せていた。個人的に気にいった店が閉められるのはとても残念だ。

周辺で若い人達がお洒落な店をいっぱい始めてくれると街が賑やかな雰囲気になり、また違った街づくりへと向かっていくのではないかと期待したりしている。多分いまはどこの地方都市もこんな感じで、商店街では苦労しているのではないかと想像する。以前に全国の色々な商店街や商業地を見学に行ったことがあるが、どこも前のような賑わいを取り戻すための取り組みをあれこれ試行錯誤しながら行っていた、大体成功した所を見学に行くのだから、面白い企画を考えたりしている様子を聞きながら、これは地元で使えるだろうかと帰りの時には考えていた。でも実際にはお金がかかることであったり、いくつかの障害を越えていかなくてはいけないことであったりと、なかなかその重い腰を上げると言うことには至らない場合が多い。それぞれ個人的に抱いている情熱のようなものが、現実の場ではなかなか一つの方向に向かって結びついていかないというのがある。

今日私の店の向かいにある店舗に貸店舗という張り紙がしてあった。確か開店してそんなに経過していないと思ったのだが、速いものだ。私が店を始めてから、向かいの店の名前はすでに三回変わっている。現実は厳しい。