残された時間に難解な表現

 雑誌や新聞の年末恒例の特集でよくあるのが、今年一番感動した本というようなものがある。そこで色々な人が推奨していた本があったので読んでみた。古本でもなかなか安くならないので少々高いのを承知で購入して読み始めたのだが、いきなり最初から形容詞の難しい表現に振り回されて結構我慢しながら読み進んだ。後半はその文体にも慣れ、また話の内容もわかってきたので割と読みやすく感じた。写真が多くその分は見るだけで済んだので助かった。

 映画化された作品も観ていないし、前作も読んでいないので、これが年間のベスト作品だと言われると悩ましいが、その先入観を差し引いても作者の真摯な生き方が伝わってきて読後感は良かった。訳者の文章が作者の文章にどれだけ忠実であったのか原書を読めない私としてはわからないが、訳者あとがきが最も自然に読めたような気がした。残された時間をどう生きるのかということは今の私にとっても大切なテーマである。そんな中で登場する様々な境遇の人たちがとても貴重な人に思えること、ネットの世界から出て本物の人と接するということが自分を生かしてくれるということ、その人たちがパソコンと無縁に生きていることなどがヒントになるかも知れない。でもこの作者はきっとまたパソコンの前で次の仕事に取り掛かるのだろうと思う。