何故今なのか

 先日銀座のデパートで開かれた古書市を見に行ったが、さすが銀座という場所柄なのか高い本や紙物類が多くとても買えなかった。その中に一店だけ漫画を専門としている所があり、ある有名な漫画家のスクラップだというものがたくさん出ていた。ほとんどが昔の漫画雑誌の切り抜きで、実は結構ここが賑わっていた。とにかく300円位からと安かったせいかもしれない。何冊か抜き取ってみたら、ほぼ自分と同じ年代くらいの人らしく、見覚えのある作品がきれいに製本されており、それが山のようになっていた。

 あまり食指が動く内容ではなかったので(すでに読んでいたり、自分でも持っていたり、ということ)買ってこなかったが、漫画専門の古本店などの目録を見ると、どうも私が以前好きだった漫画家のスクラップと言うことが判明した。もう今は作品を書いている様子もなく、蔵書の整理と合わせて処分したような印象を受けた。後日、古書目録で調べたら貴重な昔の同人誌なども売りに出されており、それらは高い値段が付けられていた。もちろん私の買える値段ではない。

 ずっと昔にその漫画家の家を訪ねたことがあり、多くの漫画や本が資料として家の中に積まれていたことも知っていたが、それらも全て処分してしまったのだろうか。目録の中には交友のあった人達の手紙なども載っていたので、これらのものも全て古本店に売られてしまったんだなと思った。さて、別の古本店の目録には映画関係のスクラップも出ていた。その店にしては比較的安い値段が付けられていたので応募してみたら当たってしまい、今そのスクラップは私の所にある。漫画関係の資料は多少興味があるが、映画関係は店で売ることにしよう。あの頃からすでに50年の歳月が過ぎようとしている。