立ち位置

 古本屋としての立ち位置は店名にも示しているように、後ろに並んでいる集団の一員であると自覚している。波乱万丈の人生だったと言うほどのことはないが、色々な経験があってそうなっている。それは30代中頃からであり、その理由はあまり憶えていないが、身体の不調や人間関係ではないかと思っている。歌謡歌手の後ろでバックコーラスを務めるグループの一員という感じだろうか。歌手を盛りたてながら、居てもいなくても良いような感じだが、居ないと物足りない存在が理想的とも言える。

 自分の蔵書が許容範囲を超え、また周囲の人達から定年後は古本屋の親父が理想的だと言う声を聞き、でも誰もそんな馬鹿なことはやらないじゃないかという事実から、自分がやってみようと考えた。実際こんなにすぐ出来るとは思わなかったので、実はもうその役割は終わっているとも思っている。出来るだけ目立たない裏通りの古本屋であまり売れない本を並べている愛想の悪いおやじと言うのが良いのだが、思うようにはいかない。店も汚くて埃だらけの本が積み上げられているというのもいいかなと思うが、なかなかそうはならないのが現実だ。

 あまりお客の来ない古本屋を目指していると言うと(実際あまり来店者は居ないのだが)それは可笑しいと言われるし、趣味の店と言うとそんな好きなことが出来ていいねと皮肉られるし、理解者は少ない。目立たずにやっている事が評価されず、でも居なくなると少しだけ困るという社会貢献型のスタイルを模索している。結果は後々にわかるのだろうが、見た目通りだったとなるかもしれない。でもそれでいい。