儲からない古本屋をやるということ

  当地に古本屋を開いてから三年が経過して借りている店舗の更新の年になった。経営的には赤字なのでもう少し安い物件探しをしていたのだが、時期的に間に合わない状況になったので現在の場所を更新することになった。しかし現状は極めて厳しい経営を続けることになった訳で、結局いつ閉めるかわからないということは全く変わらないままである。本来商売には向いていないから店はやめなさいと言われていたのに古本屋を開いたのには簡単な理由がある。私の周りには定年になって退職したら古本屋でもやりたいと言う人が多かったのに誰からも古本屋を開店しましたと言う話が来ない。なら自分でやってみようということだったのだ。それが意外とスムーズに進んでしまったということなのだ。こんなことが私の人生の後半はずっと続いている。他人に頼まれたりして何かをやることが多いのは主体性が無いのと自分の残された時間はそういうことに使おうと決めたからである。後半とは30代半ばからであり、今となってはもう完全に余った時間を使っているような気がする。そんな訳なのでいつ閉めることになっても儲からなくても定年退職後の古本屋の親父はもう経験してしまったので目的は達成しているような気になっている。

 地方の古本屋が次々と閉店している中で開店することは爽快な気分で、これは私がいつも言われているように少し早すぎたのかもしれないと感じている。実際東京近辺で最近若い人達が面白い古本屋をオープンしている状況を見ると少し早すぎただけで間違いではなかったと思う。この地でもこれから若者が店を開いても良いのではないかと私は思っているのだが、なかなか出てこないのは皆さん堅実な人生を考えているからなのだろうか。せっかく古本屋をやっているので、どんな店があるのだろうかと色々な店を見学に行っている。そしてこれが結構面白い。古本の値段の付け方、店の棚の作り方であったり、本以外に何をやればいいのかということであったり、若者たちの店作りは勉強になることが多々ある。まだ行ってみたい所があるので時間をとってちょこちょこと歩いている。

 しかし、もともとが飽きっぽい性分のようで安定してくると自分で壊してしまうことが多く、次には何か違うことができるのではないかとつい考えてしまう。一時期アルバイト生活をしていて、どうせ正規の職員ではないのだから半年位で色々な仕事をやってみたいと思いそれを実行していたら、面接の時にどうせやめるんでしょと指摘されてしまったことがある。当然採用にはならなかったので、その後の職場は少し長く勤めた。だが途中で強引に古本屋を始めてしまったため三つの仕事を兼務することになってしまった。以前にも同じ様なケースがあり、かなり疲れながら勤務をしていたのが、結局今までを継続しつつ身体を酷使して働いているのが合っているのかも知れない。貧乏暇なし。

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コメント: 1
  • #1

    午後の時間割 (金曜日, 06 5月 2016 06:42)

    儲からない古本屋を苦労しながら続けていくということは、よく考えるととても大事なことのように思えてきます。自分にとっても、お客さんにとっても。政治や経済や価値観や習慣は時代と共に変わっていきますが、変わらないものを発見する場所や機会はきっと必要です。古本屋はそんな場所の一つのような気がします。