優しさに触れたい

 漫画原作者であり時代小説を書く女性作家だが、この人の原作作品を読んだことがない。時代小説が面白いからと言われて名前だけは覚えていたが本は読んだことがない。名前を記憶していてこの本を買ったのだが読むまでにかなり時間がかかってしまった。知らない作家であると同時に何となく気が進まないという感じだったからだ。そして意を決し読み終えた。読んで面白かったかと言うと実はそれほどではなかった。本の帯に書かれているように初のエッセイ集である。それぞれが短くて読みやすい。これが漫画雑誌に四年半も続いた理由の一つかも知れない。もうひとつの理由は人柄が表出するやさしい文章だろうか。それは「長いあとがき~高田郁のできるまで」を読むと実感する。自分の作家としての人生をけなげで強かにこんな風にさらっと紹介できる人はそういないだろう。でも私は時代小説の方は多分読まないと思う。「晴れときどき涙雨」高田郁(集英社)