臨死体験

 霊界やオカルト、死後の世界などの本に関心を持ち、それらに関する本を読んでいたことがある。そこから宗教関連の物にも及び新宗教にも手を伸ばした。しかし現実には霊感が強いわけではなく何も体験することも無く想像するしかない。臨死体験にはこんなこともあるのだと思うだけである。以前に読んだ立花氏の「宇宙からの帰還」からは人間が宇宙空間から受ける何らかの影響力が、その後の人生に作用するのではないかと想像していた。無重力の世界だけではなく自分の足の下に何もないという感覚がわからないのと同時に、考え方や生き方に影響を与えるものがあるのだろうと思っている。その本の中には宇宙飛行士を体験した人のその後の人生が書かれており、何人かの人が農業を営んでいるということがわかった。その共通感覚は何だったのだろうかということに興味を持っている。

 今回の本は事故や病気などで臨死体験をした人達の話をまとめたものである。ほとんどの人がそれを憶えているということにも驚くのだが、その体験が似ている事にも驚いてしまう。死の世界の入口まで行ってしまった訳で、しかし皆そこから帰還しているのだ。体験したことの中に共通している事がいくつかある。一つは幽体離脱という現象で、自分の意識が身体から離れて自分を外から見ていることである。この際には自分の実態はないがとにかく見ているし、憶えているのだ。また死の世界に行く所には川や水が流れている。そしてそこに入っている人とその手前にいる人がいるのだが、渡らずに戻ると生き返ると言うことである。最も共通しているのは暗い所から例え様のない花が溢れた光の強い所に出るということである。その時点では誰もがとても心地良く感じているのだ。生き返って当然痛みや苦しみに耐えることになるので、あの時行ってしまえば良かったと言っているのだ。そして生環して全く元のようになる訳ではないのだが、当然死に対する恐怖感が変わっている。

内容的にはよく言われている事であり、本当にそんなことがあるのかと思う。私も事故にあって呼吸できずにのたうち回っている時にこうして死んでいくのかなと思ったことがあるが、そこから先は経験していない。突然やってきて意識が飛んでしまえばそれだけのことで後はわからないが、渡ればいいのか。年取ってこういう本を読むと現実的だ。「証言・臨死体験」立花隆(文芸春秋)