二度とない時間

 以前に店で演奏会をやったことがある。基本的には自らの企画を店でやることはないのだが、古書店で音楽会をやりたいという持ち込み企画だった。すでに二度目となる三人にゲストとしてギター女子が一人、時間前にリハーサルがあった。とりあえずいつもお客さんが来ない店なのでたっぷりと練習ができる。やることもないのでその光景をながめていた。構想しているのは詩の朗読と歌をミックスした構成なのだろうかと思われる。とても良い企画だと思うが残念なのはお客さんが少ないことでもったいない。

 練習中にキーボードとでゲストの女の子で演奏する。なかなか良い感じである。他のメンバーも思わず聞き惚れる。さて本番が始まるとちょっと違う。二度目なので新鮮味が薄れてしまったのだろうか。声が出てこない。二人がうまくかみ合わない。何だか普通の演奏だ。後で他のメンバーに確認するとやっぱり同じ感想だった。その時はやはりすごく良かったのだ。レコードにする時などは何度もやり直すから一番良いものを記録して残すことができる。よくレコードとライブが違うということが言われるが、ライブでは良い時と悪い時とが味わえる。それが魅力なのだと思う。その時良いと思った演奏がもう一度あるとは限らない。

 初めて東京に住んだ時には生の演奏が聴けることが嬉しくてよく音楽喫茶に出かけていた。当時はGSが流行っていてテレビで見るバンドが生で見られたのだ。それも入れ替えなしでずっと聞いていられた。いい加減にやっているバンドもあったが客も少なかったので仕方ないかもしれない。練習だと思ってやっているバンドもあった。それはそれでなかなか味わい深い演奏だったが、もうだんだんと忘れてしまった。