受賞作品を読む

 前回に続いて芥川賞受賞作品を読んだ。前回と言うのは又吉直樹氏の「火花」という作品が受賞した時で、ある種の話題になっていたからである。毎回読んでいる訳ではなく何となく気になる感じがあるからだ。この何となく気になると言うのが自分にとっては大切な部分なので感覚のようなものである。単行本になると高くなるし、本屋で山積みされているのを見ると買うのが嫌になってしまうので、雑誌で読むのが常である。

 作品は絶賛する訳ではないが面白かった。社会の中で普通の人間として上手く生きられない人達は多く存在する。現代社会の中では色々なケースがあるのだろうが、作中に出てくる人は新鮮だった。それをこんなに自然に描き出して見せると言うことに感心してしまった。現代的な作品として同じような読後感を持ったことがある作品に、川上弘美氏の「蛇を踏む」や桜木紫乃氏の「ホテルローヤル」がある。どれも読んでいて不思議な感じがする作品で、まるで女性漫画家の作品を読んでいるような気がした。今回作者の創作過程を語る文章があったが、最初の作り方はまさに漫画製作のようで、こんな風に書いているのかと思った。最初に買おうかどうかと偶然にもコンビニでパラパラと読んでみた時には、ありふれた会話部分が多くて迷ってしまったが、今は別の作品も読んでみようという気になっている。「コンビニ人間」村田沙耶香(文藝春秋)