もう一度今更ながら

 芥川賞受賞作品の単行本は、受賞からしばらくすると確実に安くなる。この本もどこかで安く売っていたので買っておいたものだ。今では大体が店頭の均一台で買えるようだ。買ってはいたが、なかなか読むことがなかった。読み始めたら意外と早く読み終えてしまった。これも面白かった。人物像はテレビで見たような気がするが、就職しないで家に引きこもって毎日小説を書いていたと記憶している。受賞のコメントも「貰っといてやる」だったと思う。

 西村賢太氏の本もそうだったが、内容は私生活が垣間見られるようなストーリーで、こちらの方が展開がわかりやすかったように思う。ラストもあまり希望が見える終わり方ではなかったが、そうだろうなと納得できるお話。毎日少しでも小説を書きつづけるという作者の姿勢もすごい。ここの所ずっと芥川賞作品を読んできたが、やはり受賞作品は面白いと思う。

 今の読書傾向としては、何でもありという感じで面白いと言われれば読んでいる。お客さんが探している本なども、面白いんだろうなと思うから入手でき次第自分でも読んでみる。つまらないと思ってもとりあえず最後まで我慢して読む。最後までつまらない本もあるが、何となく手当たり次第という感じになっている。ある意味では投げやり的な気もするが、せっかく読めるんだからとにかく読んでみようと思っている。「共食い」田中慎弥(集英社)