どう表現したらいいのか

 店のシャッターを開けた時に一瞬何とも言えない異様な匂いがするので気になっている。よく言われる古本の匂いだと思われるが、やはり気になってしまう。以前からあった本当に古い本は大分処分してしまった。それは夏に締め切った店内でこの匂いに包まれていると本当に頭が痛くなってきたからだ。それ以後は本当に古い本の汚れやほこりなどを取ってキレイに拭いてカバーをかけるようにしている。もうひとつは店自体が古いビルで10年以上も空き室だったということもある。なるべく内装にお金をかけないでそのまま使っているからだ。今日も古い本の買い取りがあったが、確かに古本独特の匂いが強かったと思う。時々外に出て気分転換を図っているが、外も車の往来が激しくてドアを開けておくのも気になる。ずっといれば気にならなくなるのだが、店に入った時の感じが微妙に嫌になるので困っている。

 雨の日なのでと言うこともなく暇なので本を読んでいたら一冊読み終えてしまった。読書リストにあった本ではなく探求本リストにあった本だったが、思い切って買ってしまった。ついでに読んでしまった。お客さんからの情報でそのうちに入手できればと思っていた本だが、内容的に難しいだろうとあきらめていた。それなのにこの読後感は表現しようがない。後書や前書を読むとかなり危険な内容のようだったが、内容は完全小説であり、それも古い。ノンフィクションでは出せないと思わせぶりに誘っているのも読ませる工夫だとしたら全体が創作だということになるのか。事前に情報を貰っていないと読者としては想像力があってもわからないだろう。高い本だったので期待しすぎたと言うこともあるかも知れない。「消えたモーテルジャック」荻原雄一(立風書房)

 もう一冊はストーリーがあるものではなかったので少しずつ読んだ。「小説作品をまともに論じた本」という作者の後書を最初に読んだので初めはかなり力を入れて読んでしまった。「こんな読み方もある」と言う言葉も付け加えてあったので後半は楽に読み進めた。それにしても色々な切り口があるものだと感心しながら、いっぱい本を読んでいるのだろうと思った。知識も豊富で語り口もくだけていて面白いが薄っぺらく感じてしまう所が残念に思える。時々参加している読書会で教えてもらったのだが、値段が安くならずに買うまでに時間がかかってしまった。もう一冊買ってあるのでゆっくりと読もう。「文学的商品学」斎藤美奈子(紀伊国屋書店)