漫画への強い想いを感じる

 今書いておかないと駄目だと言う想いなのかもしれない。年代的な感覚で言うと戦後の何もなかった時代から復興へと向かう社会が変化していった時代のことだ。その時代の若者たちももう社会から退いていることになる。懐かしい想いでとともに記録しておくことが必要なのだ。それにしても筆者の漫画についての思い入れは相当なものがあるようだ。前作は読んでいなかったが、この本に掲載されている何人かの漫画家には私も興味を持っているので読んでみる気持ちになった。本の中では29人の漫画家を紹介している。年代的にも同時代であり、半分位の作家に興味を持っている。同時にこれらの漫画家がデビューして活躍した雑誌に「ガロ」「COM」があるが、この雑誌についても同様の想いを持っている。漫画雑誌としては一時期にあったブームですでに書きつくされた感もあるが、当時活躍した漫画家たちについて書き残しておきたいと言う強い想いが感じられた。また新たに知ることができた内容もあった。そこから自分が少し調べたいと思うこともあり、貴重な資料ともなる。筆者はその想いからかってある作家を追い求め、やがて作品集を刊行した。そして今度の本ではさらに何人かの作品集をまとめてほしいと望んでいるのである。果たして実現するのだろうか、楽しみである。「漫画のすごい思想」四方田犬彦(潮出版社)