本は何処から何処へ

 あまり目立たない古本屋なので通りを歩いて行く人もこんな所に古本屋が有ると言う感じでちらっと見ていくことが多い。その前はここは何の店なんだろうと言う感じだったので何年かやっているうちに少しは認識されてきているのかもしれない。でもまだお客さんが入ってきて本を眺めて出ていくケースが多く、古本屋としては成立していないと思っている。何人かの常連さんはいて定期的に入荷した本を観測していく人もいるので全く機能していない訳でもなさそうだが、商売としては成り立っていない。

 最初から知り合いの人からは本を送ってもらっていたが、一応電話帳には古本屋として登録してあるのでたまに本を買い取ってもらえるのかと言う問い合わせが来ることもある。店には駐車場がないので手に持てる位の本を持参してくる人もいる。店の前に車を止めて本を運び込む人もいる。そんな時は慌ただしく査定をして値段を提示するが、一体いくらで買い取ったら良いのかと困るようなこともある。お客さんとしていくらでも良いと言っても少しでも高く買ってもらいたいのだろうし、こちらとしても必要ない本を仕入れるわけにもいかないので難しい局面となる。

 最近は口コミで本の整理を相談されることが出てきた。ここ何回かそんな話が出て買い取りに行ったこともある。家人が亡くなったり、高齢で施設に入ったということもある。年齢的にはほぼ同じ位の人になるので蔵書も何となく似てくるようだ。同じような本がいっぱい入ってくることになってしまうので必要性はなく処分を考えなくてはならなくなる。人口の比較から言うと戦後の人口が増えた時代の人たちが購入した本がこれから出てくることになるのだろうか。貴重な本を多く収集している人はそう多くはいないと思われるので同じような本が出てくることになるのだろうか。今自宅に処分できないでいる蔵書を抱えてどうしようかと考えている人はできるだけ早い段階で方法を考えておいた方が良いかも知らない。

 戦後の時代は娯楽として本は有ったが、今はあまり本は売れていないようだ。したがって本自体も発行部数が少なくなり値段も高くなってきている。そうなるとますます本は売れなくなるだろうし、これから市場に本は少なくなるのかも知れない。本の代替的な娯楽もいっぱいあるから本を読むことを必要としない時代が来るのかもしれない。その時には古本屋もなくなるだろう。