社会的事業と新公共スタイル

 古本屋を始めてもう4年目となっている。お客さんからはいつから此処でやっているのかよく聞かれることがある。要するにこんなところに古本屋があるなんて知らなかったということなのだ。特に開店の宣伝をした訳でもなく大きな目立つ看板が有るわけでもないので仕方ないことだと思う。こちらとしてもいつが開店日ということもなくだらだらと始めているのではっきりとは言えない。

 開店当時はまだ会社に勤めていた。勤務形態が特殊だったこともあり、かなり自由に出来ていた。年齢的には60歳を過ぎてそろそろ勤めは辞めたいと思っていた。そこで勤務はしながら店を始めてしまった訳である。そこから勤めは週に2回の出勤と言う形態にして開店準備をしてきた。準備と言っても本棚を組み立て本を整理して並べるという作業で今とさして変わらないが、何しろ大量の本なので少しずつやってきた。生活も考えて午前中はパートの仕事を入れて実に不規則で疲れる日々をおくっていた。以前からそんなハードな働き方が多かったのでさほど大変とは思わなかったが、外から見ると過酷な生活に見えたようだ。何しろ休みが無いのだから。

 午前中は月曜日から金曜日までパート勤務、月曜日と火曜日は都心まで出勤、午後は火曜日から日曜日まで古本屋という形になる。加えて臨時的な仕事もこなさなければならないケースもあった。と言うことで朝6時頃から夜の7時頃までをベースに働いていたのだ。流石に午後は店番をしながら居眠りをしていたが、お客さんが来れば飛び起きてということになる。店は午後からなのでいつも開いていないという印象があるのかもしれない。今は仕事はやめて古本屋のみだが、営業時間はそのまま週休2日で午後のみ営業となっている。したがってあまり知られていないし、何をやっている店なのかわからない店に見えるのだろう。それでも口コミなのか最近は本の買い取りを希望するお客さんがポツポツと来るようになった。

 若い頃は公務員生活をおくっていたが、そこを退職してからは普通の会社勤務はしていないので普通の定年退職という時期は無かった。だが年齢的にそうなったらそこからは何らかの社会貢献的な仕事をじっくりと出来たらいいなと思っていた。前の会社がそういうことをフリ―な立場でやらせてくれていたので何度か公共施設のプレゼンに参加し自分なりに情報を集めていた。実際にはなかなか難しく何をすればいいのか具体的なことは見えてこない。とりあえず今の古本屋も商店街の活性化の一環として市の街づくり補助金を活用して始めた。今では事業としての採算が難しく一つの文化運動だと思ってやっているが、いつまでこうしていられるのか。