また宗教本を読む

 以前に読んだ「禅と福音」という本は牧師と僧侶の対談だったが、その本が面白くて関連する本を何冊か買って置いた。そんな本が結構置いてあってなかなか読めないのだが、同じ人の本が新刊書店に並んでいたのでつい買ってしまった。筆者は早稲田大学を出て民間会社から仏門に入った。現在は恐山にある寺の住職代理ということで日々の様子を本にしたものである。仏教について書かれたものではなく恐山とは何かという形式で書かれている。語り口調での文章なのでこれを生で聞いたら面白いだろうと思う。

 経歴では永平寺で20年の修行生活をした後に恐山へとあるが、本の後半部分ではその経過が書かれており、それもまた筆者のことが良くわかり興味を抱かせるものがある。普通はそんなに永く修行している僧はいないらしい。と言うか辛くて逃げ出す位の生活である。そこで修行をして自分の寺に戻るというような例が多いらしいのだが、対談本の中で明らかになっているように筆者は仏教を極めようとして入門しているのであることから何年いても本人は構わないのである。最後は指導者的立場にいるので流石に居場所がない感じはあったようだ。

 一般的に言うと「お坊さんらしくない」と言われるらしいが、同僚から「君には信仰がないね」と言われて認めてしまう所も見事と思ってしまう。自らも悩みながら仏教とは何かを追及していく所を素直に語っている。分かりやすい文章で自分自身の疑問も合わせて宗教を解析していく。著書も多く次を読んでみたいと思った。この本が書かれたのが2010年で、発行が2012年である。その間に東日本大震災があった。長いあとがきには自身の在り方も含めて宗教が震災や死にどう立ち向かうのかが書かれている。現代社会に対する批判ではなく「311は始まりにすぎない」という問題提起として正しいと思う。「恐山」南直哉(新潮新書)