少し心配している

 最近若い人の書く本を意識的に読んでいる。文学作品や評論だけでなく面白そうだと感じるものは何でも構わない。要するに若い人がどんなことを考えているのかがよくわからないからだ。どんな本が売れているのかも気になる所でもある。だからと言って売れそうな本を棚に並べるためではなく単純に知りたいだけである。自分たちはもうここまでで終わりなのだから将来どうなるのだろうと言うことを考えるからだ。

 本を読むことで慣れてしまうこともあるかもしれない。自分が若い時に読んだ本を現在作家の本と比較するとそう思うことがある。読みにくいとかわからないと感じるのは自分が今まで読んで来た本との違いからか単純に興味を持てないからということではないか。若い人の書くものがどう面白いのか理解できるという前提はなく読んでみるのだが、これでいいのというのが大体の感想である。疑問と不安不満が入った印象を受けることが多い。

 今回読んだのは、大学を卒業して就職もしないで好きなことをして生活をしている若者の本である。家を建てない建築家、作家、芸人、そしてタイトルが示すように新政府の総理大臣であると言うのが本人のいい分である。読後感としては非常に不愉快でそれで良いのかということになる。ただこんな次々といいことが起こる訳がないのでこれは本の中の話として受け取るしかない。建築学科を卒業して有名建築家のもとで修業をして、本を何冊も出す文才があり、外国にも進出する有能な人材なのだ。しかし読者はこんな生活が出来たらいいなと路上生活者を目指すのか、会社勤めをしないで総理大臣になるのか、思いつきのいたずら書きを本にして売るのかということなのだ。次の時代は若い人達でつくるのだから心配することはないのだがこれでいいのかと言う気持ちが少しある。「独立国家のつくりかた」坂口恭平(講談社現代新書)