君たちはどう生きるのか

 昔から漫画本は読んできたがアニメ映画そのものはあまり見たことはない。テレビでも漫画は見ないし劇場用のアニメ映画など見にいくこともない。大昔にテレビでディズ二―ランドという番組があり初めてアメリカの漫画を見たがほとんど興味を持つことはなかった。レンタル用のビデオで何本か宮崎駿監督の作品を見たがそれくらいだろうか。だがこの本はアニメのスタジオジブリについての本である。著者はアニメ雑誌の編集からアニメ制作の現場に移り劇場用アニメの制作を担ってきた人である。宮崎駿作品が多くの人に人気があるのは知っているがマンガ映画ということで映画館で見ることなどはなかった。

 いつだったかテレビ衛星放送で宮崎駿監督のドキュメンタリー番組をやっていたのを見たことがある。BSは再放送が多いので別の日にまた同じ番組を見てしまった。じっくりと見た訳ではないが引退した筈の宮崎駿監督が再度劇場用アニメの制作をするということを意味しているような気がした。そして番組の後半で若手の映像作家が宮崎監督に見せた作品について言った言葉が耳に残っている。監督は毎日散歩している時に会う障害児のことを引き合いにしてこの作品は障害者を侮辱していると怒りを露わにしていたのだ。映像では人間のような生き物が気持ち悪い動き方をしているのだがその不気味な動きが面白いと言うことのようだ。その感性に対して不快感だけではない苛立ちを覚えたのかもしれないが番組の最後には最後のアニメ制作を匂わせているのだ。

 後日その作品名が「君たちはどう生きるか」と決まったことが発表されたがこれは本のタイトルから採られたものらしい。以前にも好きな作家であるという堀辰雄の作品名をタイトルにした映画を作っているが果たしてその内容がどういうものになるのかが気になる所である。シールズという学生グループが一時期国会前での行動で話題になったことがある。その時に自らが読んで影響を受けた本を「今を生き抜くための102冊」というリストにまとめている。その中にこの「君たちはどう生きるか」が入っている。そして今この本がマンガになって書店のレジの脇などに積まれているのだ。これは誰かが仕組んでいるのだろうか。いつになるのか果たして完成するのかわからないが宮崎駿監督作品の内容が妙に気になってしまう所だ。本の著者はスタジオジブリの代表でもあり過去のアニメ作品のプロデューサ―もしているのでその時々の経過が面白く書かれている。基本的にはマンガアニメが好きな大人達が集まって創っていると言う雰囲気が良くわかってくる。今は日本のアニメは世界的にも人気があるがその中で成功して生き残っているのはすごいものだと思う。「仕事道楽」「ジブリの哲学」鈴木敏夫(岩波書店)