意外な展開

 

 以前に「江戸の非人頭車善七」というこの人の本を読んだことがある。その経過は漫画「カムイ伝」だったが、同時に「浅草弾左衛門」と言う名前もその中には出てきていた。それについては同じ筆者から厚い本が出されているがまだ読んでいない。時々古本屋で立派なその本を見かけることがあるがなかなか買えないでいる。今回は差別問題としてではなくセクハラ問題と言葉としての差別表現が気になっていたので読むことにした。中で取り上げられているのは筒井康隆氏の昔の作品である「無人警察」という作品とてんかん協会との関係、筒井氏の断筆宣言についてなどである。それらの経過と意見が本人はあまり関わりたくないというニュアンスだったが、丁寧に書かれているのでとてもわかりやすい。教科書検閲やマスコミの規制についても触れられているが、特に興味深かったのは夏目漱石の「坊っちゃん」や水俣病についての部分だった。今はケイタイ小説などがあり、ネットが普及してSMSなどで様々な情報が氾濫している状況の中で表現の難しさがどこまで認識されているのかどうか考えてしまう。「作家と差別語」塩見鮮一郎(明石書店)