今でも読む漫画

  すでに所有している漫画関係の本は少しずつ処分しているのだが、最近も何冊か漫画を買っている。今更ながらコレクションに加えることはなく、ただ単純に読みたいだけで、読んだ後はどこかの段階で売ってしまうつもりだ。買ったのは次の五冊である。吉本隆明「全マンガ論」(小学館)、これは漫画作品だけを論じた本で、中の岡田史子作品についての部分を読みたかったのだ。次に、津原泰水原作、近藤ようこ作画の「五色の舟」(カドカワ)、これは何で読みたかったのか、誰かに紹介されたのか全く憶えていない。だが近藤ようこ氏の絵がすごい。話も面白いのだが、とにかく良くこれを漫画にしたなと言う気がした。次は、神村篤「暖かい日陰に」(青林工藝社)、私が今最も注目している新しい書き手である。雑誌「アックス」でしか発表していないと思うが、作品数が少ないので自分の読むペースから言うと丁度いい。ただ未だ最初の作品を超えた作品がないような気がする。そして、一ノ関圭「鼻紙写楽」(小学館)、雑誌に年数回連載されていたが、雑誌が廃刊となり、続きは読めないのかと思っていたら、突然単行本でまとめられて出された。それも連載時の順番を入れ替えてあり、加筆もされて面白さが増してきた。さらにその後も、また続きが時々発表されているので期待している。そして、宮谷一彦「ライク・ア・ローリング・ストーン」(フリースタイル)、何と1969年に雑誌に連載されていた作品が一冊にまとめられたものである。おそらくこの作品が単行本になることなどないだろうと思っていたが、好きな人がいたんだと思った。おまけに編集ミスで順番を間違えていて再発行している。無料で交換してくれるのだが、面倒くさいのでそのままにしている。これが出されただけでも十分である。最後は、中西章文「夢の途中」(青林工藝社)という本である。これも良く出したものだと感心している。ネット上で漫画家のはやせ淳氏が中西氏の家族の連絡先を探しているのを見た。中西氏ははやせ氏のアシスタントをしていたのである。だが病死してしまい、その作品集をはやせ氏が出すために探していたのだ。自分のアシスタントをしていた人の作品をまとめると言うのもすごい話ではないか。作品数は十数編程しかないがどれも面白い。この作品が掲載されていた頃は、私はもうこの漫画雑誌は読んでいなかった。だが中西氏の名前は覚えていた。遺作集なのでもうこの後の作品は読むことはできない。ただこんな風に一冊の本がつくられていく経過に感動する。