暮らしの手帖を読んでいた頃

 お客さんが昔のブロマイドを持ってきてくれた。雑誌の付録だったものだが誰だかわかりますかと言って持ってきたのだ。本人のサインが入っているのにも関わらずほとんどわからなかった。また家には「暮らしの手帖」の創刊号から揃っていると言う。そんな古い号は知らないが「暮らしの手帖」は一時期読んでいたことがあった。何故読み始めたのかは憶えていない。何年簡かは読んでいたと思う。サイズが大きいのと重いので止めてしまった。以後たまに特集で気になるものは読んだ記憶があるが最近はほとんど読んでいない。それを全巻を揃えていると言う人がいるのだろうかと思う。年に何冊かの発行なので量としてはそう多くはならないのかも知れない。しかし古本として出てくるものも一時期の年数は揃っていても数年分がほとんどである。ずっと同じ立ち位置で発行されていることはすごいと思うがそれをずっと買い続けている人がいたとしたらそれもすごいと思う。

 何故読んでいたのかはわからない。多分広告収入に頼らない本と言うことと目玉企画である商品テストと言うことがあるのではないかと思う。そんなことをどこかで読んだか教えて貰って読んでみたかったのだろう。もう一つは本の装丁やデザインが自分の好みに合っていたのかも知れない。そのベースになっているのが編集を担当する花森安治という人のセンスなのだろう。近年テレビに取り上げられたせいか関連する本が何冊も出版されている。そのうち今回読んだのは評伝である。前半は大政翼賛会で働いていた戦時中の生活が語られ後半は雑誌編集長としての活動が語られる。ユニークな女装の話や戦時中のぜいたくは敵だというコピーの作者としての話など興味深く読ませるものがある。ある意味では戦争によって生き方を変えた人物像が書かれているのだが、雑誌の編集とイラストなどの独特のセンスが一番の魅力のような気がする。

  雑誌購読が長続きしないのは特集の内容で魅力が一定しないことだ。暮らしの手帖で取り上げた内容は多岐にわたって一定の水準を保っている。結局手元には一冊も残してはいなかったがスクラップして参考にしていた記事もあった。最後に年表や文献の一覧があるので関連書籍を何冊か入手したいと思っている。「花森安治伝」津野海太郎(新潮社)