探求本を読んでみる

 お客さんから探求本を頼まれることがある。その前提として「こういう本はありますか」と聞かれる。今では本が増え続けて目録を作る作業が全然追いついていかないので、何処にどんな本があるのかおぼろげな記憶をたどりながらもほとんどがそのリクエストには応えられない。大体が探している時にはその本は見つからない。どうにかすると後でこんな所にあったと言うことがあるが、お客さんが探している本は店にないと言うのがほとんどである。基本的には一万冊程度の在庫の中から探している本が見つかるのは全くの偶然に頼るしかない。年に何回か行われる県内の大きな古本市に出かけるが、あの何万冊もの本の山の中からでも自分の欲しい本は何冊も見つからない。そういった意味からでは、今はネットで検索すれば欲しい本がすぐ出てくるのは便利であり、古書店がネット販売に重点を置いているのは理解できる。

 探している本がないのでお客さんは何も買わずに帰るしかないのだが、こちらとしてはどうもその本が気になってしまう。お客さんはその本の何が良くて欲しいのか、作家や作品の名前がわかる場合は探してきた読んでみる。手に入れた所でもう売れるあてはないのだが、わざわざ探しに来ている本なので一応読んでみる価値はあるのではないかと思ってしまう。読む本は売るほどあるのだが、何を読もうかと悩むことは多い。お客さんが古本屋で探す本なら面白い本だろうと言う安易な考えではあるが、自分の趣味的な範囲では読まないだろうという本が読めるのはありがたいことである。

 どこかの雑誌で今まで書きためた漫画関係の文章をまとめて出したいという記事を読んでいた。いつ出るのだろうと思っていたが、たまたまお客さんから出てきた名前から書店の棚を見ていたら何と既に発行されていた。あまりにも高額なので悩んだが、全二巻ということだったので思い切って購入することにした。それにしても最近の文庫本は高くなったと思う。「鶴見俊輔全漫画論1・2」鶴見俊輔(ちくま学芸文庫)