災害を描くということ

 いつだったかもう忘れてしまったがこの人のテレビ番組を見た。外国で三年間をかけて公開で絵画を作成するというものだった。その描き方はペンでひたすら細かい作業をしていくもので、したがって完成まで三年間が費やされたのだ。おまけに途中で利き腕を痛めてしまい、逆の手で描いた時期もあるのだ。画集を探したがちょっと高くて手が出なかった。しばらくしたらこの本が出て附録で大判の写しが付いていた。それはたまたま家にあった表彰状の額に入れて折り目を伸ばしている。本の内容は一つの作品の描かれる経過と部分を解説したものである。いずれにしても三メートルと四メートルの画面上で極端に細かい描写を一つ一つ見ていくとそれはそれでまた色々な発見がある。三年をかけて作成し、最終的にこれで良しと判断する経過も映像では映し出されていた。とてもきれいな絵に描かれているのは津波に襲われる街と人だ。当然東日本大震災をテーマとした作品で、タイトルは「誕生」である。あまりにも細かいので部分ではわからないが新しい出発が見えてくる筈だ。「誕生が誕生するまで」池田学(青幻舎)