哀しい詩集

 毎年年末になると詩の同人誌を出している。決まっている訳ではなく何となく切羽詰まった焦りのような感情から出すような感じでこの時期になっている。実は長年詩のようなものを書いてきた。その理由は単純なもので十代の時に教えを受けた教師に褒められたからである。最近は書きたいものがあればと言ってきたが今年は特にその意欲が薄れてまだ手につかないでいる。今手元にあるのは私より何歳か年上の女性の詩集である。店では郷土関連の作家の本を収集しているので調べている中で見つけた詩集である。私と同じ故郷に住んでいた人で中学校卒業時に東京に引っ越しているようだ。その高校生の時期に詩を書き始めており、残念なことに高校生活半ばで自殺しているのだ。その約一年間で書かれた詩を父親が詩集として出したものである。女子高生特有の聡明で感傷的な作品の中にその時代を反映するものもある。詩集の跋文を書いているのは詩人の鈴木亨という人である。女子高生の通っていた高校の国語教師と同じ同人誌で活動していた縁で長文の跋文を書いたようである。内容をみると国語教師に宛てた遺書が残されていたようだが、当然のように教師には生徒のことは全く記憶がなかったということである。接点はそれぞれが関わっていた詩の同人誌にあって後にそういうことだったのかと納得することになる。十代の頃に詩を書き始める人は多いだろうが、そのまま詩を書き続けて詩人になる人はほとんどいないだろう。だがこの時期に書かれた作品には何故か心惹かれるものがある。「赤い木馬」小池玲子(黄土社)