石神井フォーク村

 歳を重ねる度に昔の記憶は遠ざかっていく。ちょっと前まではそんなことの無いようにメモを残していたが、今はもうそんなことはしないで言わば日常を垂れ流しているようにどんどん忘れていってしまう。古いパソコンのデータの中から見つけたのは私が東京で生活していた数年間のメモであった。その中にあったこの言葉は当時石神井公園で行われたコンサートを見に行った時のものである。これは何だったのかはわからないが覚えているのは観客もほとんどいない公園で歌を歌っている人たちであった。もう本当に記憶もぼんやりとしている。だがこれが一冊の本で明らかになった。まさにそんな時代だったのかも知れないなと思う。学生運動が終わり活動家たちがどう社会の中で生きていくのかを模索していた時に地域の中で運動を創ろうとしていたのかもしれない。それは全国的にネットワークが出来つつあったのかも知れないし、あるいはそれぞれが独自に集団を創っていたのかも知れない。そんな仲間たちを訪ねて全国を歩いて回ったのがこの石神井の人達であった。というのが記録として本になっていたのだ。古本なのであちこちに書き込みがあって売れるとは思えないが貴重な資料として店の棚に置くことにした。調べてみるとまだ東京で活動している人たちであったということにも驚いた。「生存への行進」大友映男(新評社)