末永史を知っていますか、その後

 70年代初期の青春時代を駆け抜けるように漫画雑誌「ヤングコミック」に異彩を放つ作品を発表した末永史。ほとんどが短編で閉められた作品からは、私小説風に自らの体験を描き出しているように見えるが、その時代を映し出していて今見ても興味深い。当初の絵は固く上手いとは思わなかったが、少しずつ馴染んで味のある絵となっていく。私が読みたいと思って働きかけた初期の末永史作品を集めたものが「二階家の売春婦」という一つの本にまとめられた。 さらに後年になって雑誌「コミックばく」で復活、やがて本誌「コミックばく」は廃刊となったが、新潮社から出された「家庭の主婦的恋愛」という一冊の単行本が残された。その後、全く突然にワイズ出版から「銀恋」という全編描き下ろしの作品集が出された。漫画作品はここまでで、この間にはエッセイや小説などを発表していたようだ。 そして再び、これも突然に一冊の本が同じ出版社から出された。何と帯には遺稿集とある。あとがきを読むと最近亡くなったと書かれている。それも長年病気を患っていたなどということではないようなので余計に残念だ。今回は残された遺族の編集になるものなので少女漫画家としてデビューしてから最近の小説までの全てがちりばめられている。最近は小説の講座に通っていたようであるが、私は青春期の漫画作品が好きだった。絵柄は変わってしまったが後年の私生活を描いたような作品もとても魅力的なセンスの良いものだった。漫画作品は読めなくなってしまったかも知れないが、あるいは小説でまた活躍したかも知れないと思うと重ねて残念なことだと思う。「猫を抱くアイドルスター」末永史(ワイズ出版)