母の実家へ行く

 店を閉めて家に帰りちょうど一息つく時間にテレビで「ポツンと一軒家」という番組をやっていた。内容は衛星画像で見つけた山の中の一軒家を訪ねるというものだ。いま自分が住んでいる家は多少不便な山の中にあるがこの番組で紹介されるような山の中ではない。だが小さい頃に母親に連れられて母親の実家に行く時はまさにこんな感じで一日がかりであった。川に降りる坂道まで自転車で行きそこから自転車をかついで川底まで降りて川を渡りまた坂道を渡って反対側の道路に出る。川に降りる坂道はかなり急な道であった。そこから実家のある山のふもとまで行く。そこに自転車を置いて坂道を登って行くのだ。道は途中から人が一人通れるような細い山道になりやっと実家に着くことになる。帰りもそのコースを逆にたどって帰ってくることになる。

 今はその家には誰も住んでいない。一家は山を下りてふもとに家を建てて住んでいる。畑が残っているので実家は作業小屋のように使われているだけだ。テレビに映し出されているのはまるで当時の実家のような風景だった。山の上から見る景色は全くそのままである。以前に帰った時に教えてもらって行ってみたが今は10分くらいで山の上までいけるようになっていた。こんな山の上の家が全国には多くあるのだろうか。番組を見ているとこうして家を守り山の中に住み続ける人もまだいるような気がする。山も家も自然環境や代々続く家も貴重なものである。テレビはそこに住み続ける人を中心にドラマ的に作っているがこうした貴重な環境を生かした国策が考えられないものかと思うばかりだ。