翻訳について

小さい頃には何の疑問も抵抗もなくただ面白く読んでいた外国文学だったがお客さんからこの人の訳で出ているはずだから探してもらいたいと言われるとそういえば訳者によって何らかの違いが出てくるものだと思うようになった。店にも当然のように外国文学などもあるがそんなにこだわってはいなかった。難しい部分はわからないので好きな歌の訳詞をいくつか並べて比較してみたらこれが全く違う歌になってしまいそうな感じだった。意訳というのか異訳と言えばいいのかかなり冒険的な訳をするという人がいることなどもわかった。だからと言ってそんなにこだわって色々な訳者の作品を比較して読むことなどできないし詳細な違いがわかる訳ではない。お客さんがこの人の訳で探しているという本もなかなか見つからないまま過ぎてしまったのだがノーベル賞の発表の時期に村上春樹氏の作品について読んだことからこの本を読んだ。東大文学部の翻訳演習という授業で行われた内容をそのまままとめた本である。この授業の特別講師が村上春樹氏であり授業の講師である柴田元幸氏とは組んで仕事もしているらしい。内容はいくつかの作品を学生たちが訳したものをみんなで合評するというものである。これが面白い。翻訳がこういうものだったのかというのが理解できるようになっている。さすがに東大の学生たちの翻訳も素晴らしくて講師も納得する場面もある。原文も掲載されているので面白く読める。最近書店でこの人の新刊本を見たがもしかして人気があるのだろうか。まだ買ってはいない。「翻訳教室」柴田元幸(朝日文庫)