別の本も読んでみたい

本は持っていたが読んでいなかった。売れずに棚に差したまましたままになっていたのに買い取りでもう一冊入荷した。それでもまだ読んでいなかったのだが気になっていたのでそのうちに読もうと思っていた。そして出掛けた古本市でその作家の評伝があったので買ってきて読んでみた。これが読みやすくて面白かったので一気に読み終えてしまった。著者も小説を書いているのだがこれを書き終えるまで10年もかかってしまったということである。後書きを読むと東日本大震災の時に取材で福島に出掛けていて被害にあったと書かれていた。原発事故もあったのだからそれは大変なことだったろうと思う。

吉野せいの評伝であるがとても真面目に書かれた文章で読みやすい。福島の農家で働き70歳を過ぎて作品を書き評価されたという人である。あまり生活能力の感じられない詩人の夫との生活や、自身も文筆活動をしたいのにひたすら農業に徹した人生を丁寧に描き出している。引用している吉野せいの文章は何故かとても懐かしくて魅力的である。私には福島に親戚がある。吉野せいの故郷である小名浜や平や植田にも親戚がある。だがその土地の言葉は実際に聞いていると何を言っているのか全く意味が聞き取れない。私の故郷の言葉ではないからだが吉野せいの文章になるとすごくわかるのである。それにしても農家の嫁として子育てをしながら作品を書き続けてきたその一生は凄まじい。入手できる本は少ないようであるが読んでみたいと思う。「メロスの群れ・評伝吉野せい」小沢美智恵(シングルカット社)