熊本で繋がる

 正月にじっくりと本を読んでと思っていたが、日程は、上手い具合に店の休みに合わせて正月三日間だけの休みで、後は営業していた。他所の店の日程を見ると大体同じような休みであった。中にはきちんと長期間休んでいる店もあったが概ね似たような感じだった。そんな訳で読んだ本は数冊にとどまり何となく休みは終わってしまった。それにしても昨年同様に天気も良くて暖かく穏やかな正月だった。特に何かやったという記憶も無く折角の休みが早く終わった印象である。

読んだ本の一冊は前に読んだ「橙書店にて」という本の続きのような本だと思ったら、こちらの方が実は先に出されていた本だった。著者の名前で衝動買いしたのだが同じような印象を受けた。丁寧に書かれた文章で読後感が心地良い。帯文は渡辺京二氏である。そしてその渡辺氏が長年お世話をしてきた石牟礼道子さんの晩年を記録した本を続けて読んだ。これも書店で衝動買いである。石牟礼さんの本は何冊か店の棚に並べてあるのだがそれらはお客さんからの買い取りである。今回何で買ったのかと言うと表紙の帯にあった写真がとても良かった。息子さんから提供されたというその写真は若い頃のものだろうか表情が気になってしまったのだ。文中には「橙書店にて」の筆者でもある田尻さんも登場する。帯文を書いた渡辺京二氏と一緒に熊本で同人冊子を出しているのだ。

 米本浩二氏が石牟礼さんの晩年を書いたこの本は興味深く一気に読み終えてしまった。毎日新聞記者であり石牟礼さんの晩年には介護もしていたという。渡辺京二氏も長く石牟礼さんの面倒を見ていたそうだが、そんな人達に支えられて最後まで作品を書いていたのだろうと納得した。印象に残ったのは「あなたが赤ペンを持っていると私は恐ろしい」と渡辺京二氏が言ったことである。本の中に書かれているのは、すでに発行された「石牟礼道子全集」に校正のための赤ペンであちこち手が入れてあるという部分である。いつまでも続く創作意欲に驚くばかりである。「みぎわに立って」田尻久子(里山社)、不知火のほとりで」米本浩二(毎日新聞社)