心地よい余韻

色々な人がネットで本のことなどを載せているので何人かのブログをたまに見ている。そんな中に主に詩集などを取り上げているのを見ているページで紹介されていた本を何だか面白そうだなと感じて注文してみた。私よりけっこう年配の人のようだが何度か芥川賞の候補になったという人だった。それを最近多いひとり出版社が作品集を出したのだ。著者のあとがきを見ると昔小説を書いたことがあるなどといった風である。ネットで昔の作品が出ているのか調べたらとんでもない値段がついていたのでこれはすぐに諦めた。ほぼ新刊に近い値段で出ていたそのひとり出版社の本を古本で頼んだ。届いたのはほとんど読まれていないのではないかと思うほどきれいな本だった。作品集となっているが中編が三作まとめられているシンプルな本だった。最近雨が多いので朝起きるとそんなときは読書をしている。取り敢えず一編だけ読んでまた後で読もうと思ったのだが面白くて一気に全部読み終えてしまった。確かに昔の作品を読んでいるような感じだったが文章が丁寧で読みやすい。芥川賞を何度も候補で逃していた人のようだが芥川賞にはふさわしくなかったのだろうか。少し地味で古臭いような印象はあったが読後感が心地よくてそのせいで全部読んでしまったのかも知れない。登場人物はそれぞれ中年の女性でそこには自身が投影されているのかも知れない。誰かこれからこの本を読むことがあるかも知れないが「秘密」という作品のテーマは今日的で深いものがある。ネットでは色々な人が様々な本を紹介しているがこんな本に出合えることもあるのだと思った。「小説集・体温」多田尋子(書肆汽水域)