切れ味が良い文章

音楽家の坂本龍一氏のお父さんのことを書いた本を入手した。書いたのは出版社の部下である田邊園子という人である。龍一氏に頼まれて生存中に父のことを書いて欲しいということだったという。戦争体験者で仕事では部下に厳しい人だったようで作家からもそのような目で見られていたようだ。本人が校正したということだが人柄が面白くて一気に読み終えてしまった。簡潔な文章で編集者がここまで書いていいのだろうかと心配するようなことも書かれているのだが読後感がすっきりしているのでそんな心配もないのだろう。後記を読むと本人のエッセイ集も出ているようなので探して取り寄せた。それほど高い本ではなかったのですぐに入手できた。こちらは作家についての編集者としての文章である。それぞれが短いのですぐに何篇かを読み進めていくうちに面白くてこれも早く読み終えた。丁寧で上品な文章だが皆さん有名な作家である。ここまで深く描いてしまっていいのだろうかとこちらも心配になってくる。情景描写が上手で色々な場面が想像できて面白い。内容は少し鼻につく部分もあるのだがそれを超えて魅力がある。序文を植谷雄高氏が書いているのだが慎重な文章になっているのも面白く読んだ。「伝説の編集者坂本一亀とその時代」「女の夢男の夢」田邊園子(作品社)