懐かしの街

最近になってコロナウイルスの感染者数が少しだけ減ってきているようだ。それでも新規感染者は毎日出ているので昨年の後半のような数字にはなってはいない。そんな状況で久しぶりに東京に行ってきた。久しく本を買いに古本屋に行くことを控えていたのだ。よくネットで見ている中村橋駅の近くにある「クマゴロウ」という店に行った。東武東上線は副都心線に乗り入れていて途中から戻るような感じで西武線にも行けるようになったので便利になっている。だが意外と時間がかかった。そして残念ながら休業であった。仕方ないのでそこから西武池袋線に乗り換えて江古田まで行くことにした。新しくできた「スノードロップ」という古本屋に行ったのだがここも休業である。諦めて近くにあった「ブックオフ」に寄って安い本を何冊か買って帰ってきた。一応定休日だけは調べておいたのだが古本屋の臨時休業は結構あるのでぐずぐずしていても仕方ない。その前日に行った川越の「ホォル」という古本屋で買った「代わりに読む人」という本の冒頭に自転車でワカメサブレを売って歩く女の子が文章を書いていた。これが面白かったのだが驚いたことに江古田の路上でも自転車でお菓子を売っている若い男の子がいた。なんだかこんな行商スタイルが今は流行っているのだろうか。思い出せば昔は田舎にはアイスキャンデーを自転車で売り歩く人がいたことがある。都会の路地で自転車で行商をする若者がいるのも面白いなと思った。江古田という街は自分が十代の最後の頃に住んでいた所である。近くには日大が有り夜中に校庭を借りて走った記憶がある。住んでいた三畳間のアパートはすでに無くなっている。駅も改築されて橋上駅になっている。だが狭い道路だけは当時のまま残っていて少し歩くと懐かしく思い出すことが出来た。そのアパートで深夜に帰宅して寝ていたら朝早く兄に起こされた。母親が死んだということでそのまま直ぐに帰郷したことも思い出した。この街にはニ年間位住んだのだろうか。そしてその翌年に結婚と何とも慌ただしい数年間だったと覚えている。「代わりに読む人」(創刊準備号)