2016年

11月

30日

懐かしい名前

 今はインターネットで検索すると様々な情報が入手出来る。試みに自分の名前を打ち込んで検索してみた所、過去のいくつかの履歴が出て来た。同時に同姓同名の見知らぬ人も出て来た。どこで誰がこれを見ているのかと思うと少し怖いなと思う。この人の本を探していて名前を検索入力してみた所、ちゃんと本が出ていた。プロフィールの紹介記事も出ていて亡くなる晩年は私の故郷で暮らしていたこともわかり、少し驚いてしまった。以前に渋谷の古書店でこの人の詩集を買ったことがある。若い店主は委託でその詩集を扱っていたようだが、すでに本人は亡くなった後で、その旨を伝えるとともにもっと高い値段で売れるのではないかと言ったが、その店主は頑なに定価で売ってくれた。私には貴重な詩集となったが店で売れてしまった。

 筆者はポンと呼ばれており、色々なイベントなどで見聞きしていた。それにしても壮絶な人生を送ってきたものだというのが感想だ。最後までイベントをこなしながら精力的に活動していたようだ。60年代に多く見られたヒッピーたちのその後はどうなったのだろうと思っていたが、それらの活動の経過がわかりやすく書かれている。時々はマスコミを通じて伝えられていたが、当時知った人達の消息もわかり、何だか懐かしい。同時にその文化的な運動の内容まで解説されていてとても勉強になった。しかし、あの時代から50年が経過して何がどう変わったのだろうか。という思いもある。本を読む限り皆普通に暮らしていて、今では少しずつ亡くなっているのが信じられない思いだ。「トワイライト・フリークス」山田塊也ビレッジプレス)

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2016年

11月

27日

引きずられて

 店のお客さんがカフェを開店したので休みを合わせて様子を見にいった。まだ若い人なのでなかなかセンスのいいお洒落な店でお客さんも結構入っていた。自分を振り返ってみても、やはり自分の住んでいる所で店をやると言うのが一番良いのではないかと思う。まだ子育てもあるので少しでも一緒にいられる環境というのは大切かも知れない。頑張って続けて貰いたいと思う。何しろ私が店を始めてから、この周辺で知り合いになった店がいくつも閉店しているので心配になってしまう。まあ自分の所が一番心配なのだが。

 折角なので店で売っていた本を買ってきた。先日買った雑誌にこの人の文が載っていて面白く読んでいたからだ。しかし、これは大変だった。大体があまり読むのは速い方ではないのだが、途中で疲れてしまって続けて読むことが出来なかった。筆者は子育ての日記のようなものをブログに書き綴っている。それを本にまとめているのだ。赤裸々に描かれているのが若い世代に評判が良いらしい。でも他人に読まれるものなので自分の全部が書かれている訳ではないだろう。そして、これが結構辛いものだったのだ。自分も若い頃に子育てを経験しており、まるで子供が子供を育てているような感じだったと思う。貧しかったが辛いとか苦しいという記憶はない。でも他人から見たらきっと可哀そうな夫婦だったのかもしれない。結構色々な人に助けられたような憶えがある。それを思い出して何だか悲しくなってしまったのだ。感受性が強いのだろうか、読後にすっかり体調を崩してしまった。

 筆者のパワーはすごいもので、子育てをしながら仕事をして、社会活動にも趣味の活動にも積極的だ。その勢いで不倫も経験、落ち込みながらもとにかく前に進もうとしている。そのパワーに圧倒されて腰が引けてしまう。「かなわない」植本一子(タバブックス)

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2016年

11月

23日

金曜日を読むこと

 「週刊金曜日」という雑誌がある。これを創刊時から定期購読していた。創刊前の「月刊金曜日」もまだ持っている。何故なら一切の広告を載せないと言うことで社会にもの申すと言う姿勢で始まったからである。同時に書店では販売しないと言うことだった。創刊後は識者の講演会開催や地域の読者会活動などをやっていた。だが、その後書店販売が行われるようになり、定期購読は解約した。単純に欲しい号だけ書店で買えば良いということが可能になったからである。不思議なもので何時でも買えるとなるとだんだんと買わなくなってしまった。主要なメンバーが亡くなったり、いなくなったりで読者会もやらなくなってしまった。そして今は、全く読んでもいない。

 20年が経過して、家では家族がまた定期購読をしているので「週刊金曜日」が毎週送られてくる。内容的にはあまり変わった印象がないが、編集委員が変わっているのと社会状況が変化しているので時事問題が多く取り上げられている。当初より柔らかな誌面になっているような気がするのだが、広告を載せないで社会に諂うことなく記事を書いていくということは当然反社会的な内容だと判断されるということなのだろうか。このような雑誌を読むと言うこと自体が今の社会においては偏向している雑誌だと言われて違和感を生みだしているようだ。本屋に行って総合雑誌のコーナーに行くとそのような雑誌がいっぱい並んでいる。本来雑誌は発行者によって偏向しているもので、それは色々な出版社の出しているものをみれば明らかである。テレビで「クローズアップ現代」や「ニュースウオッチ9時」の司会者が交代したり、「ニュースステーション」や「報道ステーション」の司会者が辞めたりするということの背景が会社の方針ということになるのなら、スポンサーも何も気にしなくても良い筈の雑誌に書かれている事など気にしなくてもと思うが、何だか変わった人達が読んでいる雑誌という風に見えるらしい。

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2016年

11月

17日

政治的なるものから遠ざかること

 日々の生活の中で、ニュースを見たり、聞いたり、読んだりするとどうしても国の政治が話題になる。家ではテレビでニュースを見ることが多いが、家族はいつも画面に文句を言っている。嫌な国会議員が出るとチャンネルを回してしまう。私の気に行っている同業者のホームページでも政治的な記事が多く書かれている。わからない訳ではないし、今の社会についての不満はどうしても政治が悪いということになってしまう。それほどに現実生活は厳しいということなのだ。

 私はここにはなるべく政治的な文章を書かないようにしている。ついつい不満や意見を書きたくなるが、堪えて別の話題を載せている。それは以前に政治家として挫折、失望したからである。初志の思いは皆同じような気がするのだが、政治家の椅子に座るとほとんどの人が既成の政治家然としての振る舞いになってしまう。皆同じ顔になってしまうのだ。それは本人の自覚とともに周辺の環境や支援者の対応などでもそうなり得る。それらも身をもって経験している。政治家になっていくのが周辺も喜び、自分も楽になるのだ。そして孤独感を味わい虚しくなっていくのだ。

 ある意味では現実から逃げていると言われるのかもしれないが、政治的な主義信条は変わらないし、答を求められる場面では何ら悩むことはない。でも何時までも若くはないし、別の方法で自分なりの活動が出来ればいいと思うし、何時までもデモの先頭に立って旗を振ることに生きがいを見出している事はないと思っている。むしろ将来的なことを考えたら、小さな子供たちやその親たちにきちんと社会的な活動の意味を伝えていかなくてはならないだろうと思っている。皆年齢を重ねても若くて元気があるから自分がリードしていきたいと思っているのかも知れないが、次の次を考えてじっくりと若い人に寄り添っていきたい。

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2016年

11月

10日

本は選ばれる

 この本をどう評価したら良いのだろうか。私は自分の好きな本を見つけては店に置いているが、そこには当然のように自分が読んで面白いと思った本が並んでいる事になる。したがって極めて個人的な趣味の棚が出来上がることになる。しかし最近は少しずつ変わろうとしている。自分の知っている本の数など限られている訳で、まだ読んだことのない面白い本がいっぱいあるのだ。お客さんからこういう本はないかと聞かれることから始まって、これは面白かったと教えて貰うことにより、今まで読んだことのない分野の本も読むようになっている。この本は書評を読んでチェックしておいたものだが、別の本を探しに行った書店に並んでいたので衝動買いしてしまった。戦争において最も重要な武器となったのが本であったという帯文を見て興味を持ってしまった。

 第二次大戦中ドイツが大量の本を燃やしたということから始まり、アメリカが大量の本を戦地に送ったその過程がかなり詳細に書かれていく。戦況が徐々に厳しくなっていく中で、国民から提供された本ではなく戦地で携帯しやすい軽量の本が出版され、送られ続けていく。これが国家プロジェクトとして熱心に取り組まれている事に驚いてしまう。ドイツだけではなく思想的に危険だと判断された本が処分されたり、作者が弾圧されることはどこの国でも同様に行われていくだろう。ドイツは戦略的にそれを行い、アメリカも同様であるということだ。本が兵士たちの士気を高めるというより戦場での癒しに繫がるということが事実に近いだろう。後半部分では厳しい戦場の様子も描かれる。そんな集団生活の中で唯一自分と向き合える時間となるのだ。そんな本を読む行為の中で特に文学作品を何度も繰り返して読んでいる。

 戦争が長くなり物資が不足していく中でもプロジェクトは続けられる。図書館を中心とした蔵書の提供、収集、それらの選別、不用本の再利用、選書、戦地への発送、送られてくる本の感想の処理、これが繰り返される。次の段階では審議会がつくられ、出版社への働きかけで、「兵隊文庫」という常に携帯出来る版型の本の出版へと進んでいくのである。これは大変な努力であり、その時々に登場する人物の当時の社会への対峙姿勢も描かれる。日本と戦争をしている最中にアメリカはこんなこともやっていたのだ。

 終戦後の兵士たちの行動について最後に書かれているが、これもまた重要な内容である。巻末にはドイツが禁止した本の著者一覧と「兵隊文庫」の一覧がある。貴重な資料だ。「戦地の図書館」モリ―・グプティル・マ二ング(東京創元社)

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