2017年

5月

31日

探している本は

 長い間探していたみやわき心太郎氏の作品「たなとろぴあ」が今年になって見つかった。何年かかったのだろうか。雑誌「平凡パンチ」に約一年間連載されていた作品である。したがって一年分の雑誌を探していたことになるが、数年前にはあと三冊という段階まで来ていた。そしてそれが見つからなかったのだ。でもまったく偶然に最後の一冊が出て来たのだ。探していれば見つかるものなんだとあらためて思った。だが贅沢なもので探し物が見つかってもそれほど感動的でもなく、無いと思っていても探せばあるという驚きの方が強かった。個人的コレクターという程でもないので、作品を読めれば満足し、しまっておくこともない。今では古本として売ってしまう。

 本の探偵というのを商売にしている訳ではないが、こういう本を探しているというお客さんからの依頼があれば何とかして見つけたいと思っている。店を始めてから何冊かはそう言ったケースもあったし、店にある本を見てこれを探していたと言われれば本当に良かったと思う。そのためにもあちこち出歩いて色々な店を見て回っているし、こんな本があったんだと言うような趣味的な本を買ってきている。ただあまり高くては手が出ない。今はネットでの販売が主流で結構探している本があったりするのだが、こんなにするのかと言う位極端に高くては買うのを控えざるを得ない。丹念に探していれば見つかるかもしれないと思うしかない。

 探求本の依頼を受けて困るのが個人の思い込みが強いと実際の本との違いが出てきてしまうことである。小さい頃読んだ本ならもう記憶もどこか片隅から引っ張り出すようなことになる。全くの思い違いだったと言うことも出てくる。色々な情報をかき集めて一冊の本の形を作っていかなくてはならない。書名や作者や出版社、本の形状や色や内容まで、何でも集めてそれでもわからないのが普通で、自分の知識などほとんどないので細かい部分から思い出してもらうしかない。こんなリストを持ってあちこち歩いている。

 本を探して色々な店を見ていると何となくこの店にはこんな本があると言うのがわかってくるのでそれが目安になる。やはり店主の好みが店の棚にも反映する訳だし、その店の特徴にもなってくる。そうするとそんな本が店に集まってくることになる。昔は古本屋の棚を見るとその街の文化程度がわかるなどと言うことが有ったらしいが今はない。本を売る人もネットで調べて高く買ってくれる所に売るからだ。また近所からの買い取りだけで店の棚を作れる訳もなく、自分の個性的な店を作りたいと考える店主も多い。あの店に行ってみたらどうかと教えることもできる訳だし、探している本が見つかればそれが一番良いことで、探しだしたからといって高く売りつけることもない。ただ情報として色々な店を知っていることはある。でも実際は全くの偶然の出会いが一番多いような気がする。

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2017年

5月

25日

どう表現したらいいのか

 店のシャッターを開けた時に一瞬何とも言えない異様な匂いがするので気になっている。よく言われる古本の匂いだと思われるが、やはり気になってしまう。以前からあった本当に古い本は大分処分してしまった。それは夏に締め切った店内でこの匂いに包まれていると本当に頭が痛くなってきたからだ。それ以後は本当に古い本の汚れやほこりなどを取ってキレイに拭いてカバーをかけるようにしている。もうひとつは店自体が古いビルで10年以上も空き室だったということもある。なるべく内装にお金をかけないでそのまま使っているからだ。今日も古い本の買い取りがあったが、確かに古本独特の匂いが強かったと思う。時々外に出て気分転換を図っているが、外も車の往来が激しくてドアを開けておくのも気になる。ずっといれば気にならなくなるのだが、店に入った時の感じが微妙に嫌になるので困っている。

 雨の日なのでと言うこともなく暇なので本を読んでいたら一冊読み終えてしまった。読書リストにあった本ではなく探求本リストにあった本だったが、思い切って買ってしまった。ついでに読んでしまった。お客さんからの情報でそのうちに入手できればと思っていた本だが、内容的に難しいだろうとあきらめていた。それなのにこの読後感は表現しようがない。後書や前書を読むとかなり危険な内容のようだったが、内容は完全小説であり、それも古い。ノンフィクションでは出せないと思わせぶりに誘っているのも読ませる工夫だとしたら全体が創作だということになるのか。事前に情報を貰っていないと読者としては想像力があってもわからないだろう。高い本だったので期待しすぎたと言うこともあるかも知れない。「消えたモーテルジャック」荻原雄一(立風書房)

 もう一冊はストーリーがあるものではなかったので少しずつ読んだ。「小説作品をまともに論じた本」という作者の後書を最初に読んだので初めはかなり力を入れて読んでしまった。「こんな読み方もある」と言う言葉も付け加えてあったので後半は楽に読み進めた。それにしても色々な切り口があるものだと感心しながら、いっぱい本を読んでいるのだろうと思った。知識も豊富で語り口もくだけていて面白いが薄っぺらく感じてしまう所が残念に思える。時々参加している読書会で教えてもらったのだが、値段が安くならずに買うまでに時間がかかってしまった。もう一冊買ってあるのでゆっくりと読もう。「文学的商品学」斎藤美奈子(紀伊国屋書店)

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2017年

5月

19日

何で同じ日に

 毎日店に来るとパソコンでメールをチェックする。色々なメールが届いている。今日はファックスまで入っている。イベントの案内や定期的な連絡を読んでいると、どうして日程が重なっているんだろうと不思議な気持ちになってくる。とりあえず月に4~5日は同じ曜日があるのにそのうちの1日だけにイベントが重複して行われる。何で皆同じ日に予定を入れるのだろう。おかげでこちらはそのうちのどれかを選ばなければならなくなる。まず自分が主体的に関わっていることは優先しなければならない。そうなるともう参加できるものが限られてしまう。他の日なんてこんなに空いているのにと残念な気がするが、その日にやりたいのだから仕方ないとあきらめる。

 電車の中で読んだ本、「牛乳と日本人」吉田豊(新宿書房)、食の問題に関する本を何冊か待機させているが、やっと読み終えた。奈良時代から戦後の給食まで、日本人がどう牛乳に向き合ってきたかが歴史的に書かれている。牛乳は人間の飲物ではないという議論もあるが、天皇が飲む特別な薬効飲料と言う論もある。昔は生協で学習したが忘れてしまったし、今ではどうでもいいとさえ思える。実は実家では酪農を営んでいた。でもそれは業務用であり、小さい頃など売り物の牛乳など飲んだこともない。現実に我家では牛乳は出てこない。時々飲みたくなることもある。

2017年

5月

17日

ゆっくりとのんびりと

 毎週あちこちと出歩いているのだが、ローカル線に乗っていこうと決めたら、タイミングが悪く、ちょうど電車が来ない時間帯に出くわしてしまった。そもそも一時間に一本しか来ないのに、その時間はゼロ、要するに二時間に一本ということになる。改札を抜けてしまったし、戻って回り道をしても時間がかかるし、あきらめてじっと時間が過ぎるのを待った。ちょうど鞄の中に本を入れていたのでそれを読むことにして、それでも長い時間を過ごしたものだと感じた。

 二時間をかけてたどり着いた古本屋は開いていたのでよかった。これで閉まっていたら疲れを覚えて少しイライラするかもしれないが、おかげでじっくりと本棚を見ることができた。その間、誰もお客さんが来なかったので結構いい勝負をしている店のようだ。通路は狭くもないが本はあらゆるところに溢れている。おまけに崩れて床に散らばっているではないか。歩くために靴でずらしてしまった。申し訳ない。じっくりと見て何冊かの本を買った。また時間をかけて戻らなくてはいけないので、駅に着いたら持参した袋に入れ替えてしっかりと縛りなおしたが重い。

 今日は出がけに市内の農産物直売所でフリーマーケットに出かけた。知り合いの人が店を出しているので様子を見に行ったのだが、店の数は少なく何となく寂しい感じだった。知り合いはテーブルに本を並べて売っていたのでここでも何冊か買っている。それらを抱えながら、帰りには昔住んでいた町に向かう。昔の仲間たちがやっているNPO団体の会計監査を引き受けているので仕方ない。もうすぐ定期総会なので休みの日にやるしかないのだ。駅でコインロッカーに本の袋を入れようとしたらロッカーの幅が狭く入らない。色々角度を調整してみたが無理なようなので諦め、それを抱えて歩いて行った。

 通勤電車に乗らなくなったので、ラッシュ時間帯は避けたい。なるべく早めに切り上げてとにかく帰ってきたが、のんびりとした休みもけっこう疲れるものだと思う。そんな風に思っていたらもう今日が終わってしまったよ。

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2017年

5月

11日

もう一度今更ながら

 芥川賞受賞作品の単行本は、受賞からしばらくすると確実に安くなる。この本もどこかで安く売っていたので買っておいたものだ。今では大体が店頭の均一台で買えるようだ。買ってはいたが、なかなか読むことがなかった。読み始めたら意外と早く読み終えてしまった。これも面白かった。人物像はテレビで見たような気がするが、就職しないで家に引きこもって毎日小説を書いていたと記憶している。受賞のコメントも「貰っといてやる」だったと思う。

 西村賢太氏の本もそうだったが、内容は私生活が垣間見られるようなストーリーで、こちらの方が展開がわかりやすかったように思う。ラストもあまり希望が見える終わり方ではなかったが、そうだろうなと納得できるお話。毎日少しでも小説を書きつづけるという作者の姿勢もすごい。ここの所ずっと芥川賞作品を読んできたが、やはり受賞作品は面白いと思う。

 今の読書傾向としては、何でもありという感じで面白いと言われれば読んでいる。お客さんが探している本なども、面白いんだろうなと思うから入手でき次第自分でも読んでみる。つまらないと思ってもとりあえず最後まで我慢して読む。最後までつまらない本もあるが、何となく手当たり次第という感じになっている。ある意味では投げやり的な気もするが、せっかく読めるんだからとにかく読んでみようと思っている。「共食い」田中慎弥(集英社)

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