2019年

9月

29日

惰性からの脱出

二度の契約更新を経てなんとなく惰性的な運営状態になっている現状を反省しつつそれでもなかなか前向きな気持ちになれないでいる。休みを利用して色々な店を見て何かヒントのような感じを貰おうと思っている。いつだったか阿佐ヶ谷で懐かしい店の名前を見つけて入ってみたら何と昔はやはり貸本を扱っていたと聞いた。小さなスペースに詰め込まれた中には欲しい本は無かったがただ懐かしかった。その後再度行った時には開いていなかったのだが聞くところによるとその後に閉店したということだった。しかし最近そこが古本屋として再開したということを聞いた。それも評論家で名のある人が引き継いだそうである。その後に波行っていないのでどんな店になっているのかは知らなかったがネットで情報を知ることが出来た。私は知ることがなかった切通利作という映画を中心に評論をしているらしい人が自分の趣味的な店としてすでにオープンしている。ネットに紹介されているそのインタビューを読んでこれもまた懐かしい思いだった。以下引用する。

今まで買った本、CDLP、実はいままで人生で古書店に本を売ったことはないんですよ。自分の本棚を充実させてニヤニヤしていても誰も見てくれないじゃないですか。みせびらかしたいから売っちゃおうと。」

「あともうひとつ古物商でよくあるのは誰かが亡くなって遺品を買い取るというケースですけど、それを生きている間にやっちゃおうと。一種の生前葬かもしれないですね。」

「自分にとって無価値になった本を売るんじゃなくて自分にとっていつまでも価値のある本こそ売っちゃおうと思っているんですよ。売った本が仕事で必要になったらまた買えばいいし。」

僕はカオスなお店が好きなんですよ。前々からそういう空間に行くとこういう店やりたいなあという脳内妄想が広がっていたんです。たとえば90年代の中盤から後半くらいだと思うんですが、中野ブロードウェイにあるトリオとタコシェが同じ場所でやっていた時期があったんですよ。自費出版の冊子と昔のピンク映画のポスターや雑誌のバックナンバーが渾然一体、カオス状態で販売されていて。」

あともうひとつ同じような感覚になるお店があって。それは現在もそのままありますけど模索舎なんです。」

長い引用になってしまったがそういう思いがあって古本屋を引き継いだということである。今は駄菓子屋雑貨も置いてあると聞いたがそのうちに訪ねてみたいと思う。何をやればいいのかわからないまま惰性でいる状態だが何か気持ちを整理することにつながるような気がする。

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2019年

9月

18日

もう一冊読んでみた

本棚をよく見たら何と前回読んだ佐藤泰志という名前の文庫本が見つかった。早速これも読んでみたがこれも面白く読み終えた。この本には三作品が収録されていた。表題になっているのはデビュー作だという。何と主に登場するのはたったの四人である。小動物を子どもたちに見せて歩きたいと言うことを夢見ている人、そこで働いている人、辞めた人が出てくるだけで物語が作られている。もう二つはマンションの若い理人を主人公にした作品と工場で働く若者を描いた作品である。ここまで読んでみて色々な仕事に就いている人を描いているのだということがわかる。それぞれの仕事の内容についても取材が出来ているのかあまり知らないような仕事の内容が見えてきて面白い。相変わらず読みやすいのは文章表現の上手さなのだろうか。読み進んでいくだけで登場人物の性格や仕事に対する思いなどが伝わってくる。基本的に屈折した生き方をしている人物が多いが、その仕事ぶりを通じて性格や社会的な存在や背景などがすっと入ってくるので読みやすいのだろうか。お話そのものはきれいに片がつくような話ではなく終わるものが多いが暗くはなくむしろ何か希望さえ感じられる。色々な仕事を通じて登場人物が丁寧に描き出されていて読後感が良いのである。また別の作品も読んでみたくなる。「移動動物園」佐藤泰志(小学館文庫)

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2019年

9月

11日

久しぶりに一気読み

最近は本を読む時間が増えているような気がする。家に持ち帰って読む本が多くなっている。前と違って店ではあまり本を読まないようにしているので家に持ち帰って空いている時間を使って少しずつ読んでいる。だからまとめて一冊読み通すことはなく本当に時間をかけて一冊の本を読み終えるという感じである。おかげで少しずつではあるが店にある本を順番に読んでいるということになっている。

あまり文庫本は読まないのだが久しぶりに電車で出かけるときにでも読もうと思ってもち帰った本だった。以前に何かの本で紹介されていた佐藤泰志作品集という本を探していたのだがどこでも高くてなかなか買うことが出来なかった。それで同じ作家の本を読んでみようと思って買っておいた本だ。でも一度だけお客さんに売れてしまい再度購入したものだ。やはり人気があるようで皆高くてそんなに買うことが出来ずにこの本だけが入手出来た。それは前もそうだったような気がする。

読み始めたら面白くて久しぶりに一気に読みふけってしまった。とにかく読みやすい。全体の構成も良くて次々と展開する各章に引き込まれるように読み終えた。しかし解説を読むと何と作家が若くして自殺してしまっているという。そしてこの本が半分を残して未完であるという。するとこの小説はこの後の展開もなく終わることもない訳だ。それぞれの話が短い章に分かれていてさまざまな登場人物がこの後に複雑に絡み合ってくるはずなのにと思うと残念だが仕方ない。

名前はお客さんにも教えてもらって知っていただけだったがみなさん本当に面白い作品は良く知っているものだと感心する。解説文によると過去には何度か芥川賞の候補にもなっているようだ。加えて過去のの小説と違ってこの作品はずいぶんと準備をしてとりかかった作品らしいので今までの作品とは違うらしいということだ。自分の読書は極めて偏った読み方なのでこうして教えられた本を読んでいくことも重要なことである。特に古本屋に来るお客さんは本当に本が好きで本を良く知っている人が多く学ぶことが多い。しかし別の本も読んでみたいのだが文庫本でも高いので悩んでしまう。「海炭市叙景」佐藤泰志(小学館文庫)

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2019年

9月

06日

懐かしさで本を読む

何度も同じことを書いているが近所にあるデパートの中に書店が出来たので店を開ける前に寄ることが多い。平台にどんな本が並んでいるのか売行きベストランキングにどんな本が入っているのかを確認することが出来る。実際に買おうと思ってもなかなかほしい本は無く大体注文になりことが多いのは地方なので仕方ないことだと諦める。とりあえず新刊の本を何か読んでみようかと思った時には在庫が多いのは助かる場合が多い。先日も棚には何か本でもと思っていたが思うような読んでみたい本が見つからなかった。そんな時は文庫本が手軽で良い。ちくま文庫の棚に面だしの陳列で友川カズキという名前が目に付いた。パラパラと中を見ると今までに書いた文章をまとめたものらしい。詩を所々に入っているので読み易そうである。とにかく懐かしいのでこれを買ってしまった。そういえば最近この人を見ることもなくなった。最近に至るまでのさまざまな生活の様子がよくわかってくる。年齢を重ねてあの人もこの人もと亡くなった人との交流も書かれているのも生活ぶりがわかって面白い。大分昔のことになるが友川カズキがテレビのレポーターとして出ていた番組を見た記憶が蘇ってきた。週一の夜の番組で営業の終わる深夜の駅で最終電車のレポートをしていたように覚えている。秋田弁でとつとつと話す言葉はそのまま詩の朗読を聴いているようでとても味わいのあるコーナーであったが長続きはしなかったような気がする。そんな一場面だけが懐かしく思い出されてきた。「一人盆踊り」友川カズキ(ちくま文庫)

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2019年

9月

01日

買物難民

 店の近くにあるデパートに有名な書店が出店したので自分としては助かっている。何しろそワンフロアが全部本なのだから在庫数がすごい。とりあえず文庫の品揃えが多いのは良いことだ。不満があるとすれば雑誌の種類が少ないことだろうか。但しこれだけの在庫数をもってもほしい本はほとんど在庫なしという検索結果が出てくるので大体注文になる。時間がかかっても初版本でなくてもとりあえずは本が入手できるのは助かるという結論になる。

 この地方デパートは昔は皆がよく通ったとお客さんから聞いた。小さい頃はこの店が一流店で街の看板だったと懐かしむが今では若い人が買い物する姿をほとんど診ることはない。店全体の雰囲気や品物が昔のままなのだ。したがってお客さんのほとんどは昔からの馴染みの人で時々行われるセールの時などはそんなお客さんでにぎわっている。しかし普段は空いている頃が多い。お客さんは食料品を買うのが中心でそれ以外はとにかく高くて買う気にはならないだろう。でも今の所はまだそんな高齢のお客さんで支えられているといった感じだ。

 お客さんのほとんどは車での来客が多い。夫婦で来る場合は夫が運転手で買い物に付き合う感じだ。二人で買い物をするか外で夫が待っているという姿をよく見かける。そし最近よく見かけるのが入口付近で車が来るのを待っているお客さんが多いことだ。その人たちが待っているのはタクシーだ。さすがデパートを支えるお客さんだから買い物はタクシーでする人たちなのだ。店の周辺でもぽつぽつと店を閉める店が続いている。昔ながらの店はもうやっていけなくなっている。高齢にもなっている。店の人もお客さんも同じ年齢層なのだ。今のままの状態でいつまで同じことが続けられるのか。一年ごとにそろそろ限界なのかもと思う日々が続いている。

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