2018年

3月

30日

小さな暮らし

 映画にもなっている二人の生活が実際はどうだったのか本からはなかなか具体的には見えてこないものがある。私の周辺にはこの映画を観た人が多かった。一様に良かったという感想を貰う。何がということは上手く伝えられないようだ。90歳になる夫婦の暮らしぶりは何となく想像できるがその生活の何が人を感動させるのか。写真を見るとわかる部分もあるかもしれない。今の社会が構成している要素を否定しているのである。早くて便利で簡単な生活ではなくゆったりとした自分の時間を大切にして生きることを目指したものだ。本当の豊かさを求めて生きるために色々な人が言ってきたことだが、実際には誰でも楽な方へ行ってしまうのだ。不便な生活を大変だと思うか普通の生活としてやっていけるかどうかと言うことのような気がする。建築家の夫が描くイラストは味があって上手いと思う。これが設計のベースになっているのだろう。そして今の若い子育て世代の人たちの中で共感を持って生き方を変えている人がいることは嬉しい。全体の考えにはならないだろうが世代を超えてこういった人たちが出てくることが面白い。自分も歳をとってきたので小さなノルマを日々積み上げていく暮らしには納得するものがある。「キラリとおしゃれ」津端修一・津端英子(ミネルヴァ書房)

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2018年

3月

24日

探していない本との出会い

 

 古本屋とは何かという余計なことを考えながら店をやっているのでなかなか本が売れないのかもしれない。趣味的な古書店と言っているのも本が売れないから自嘲的になっているのだ。昔は近くの古本屋を調べて行ける範囲で休みを利用しては出かけていた。主には漫画とレコードを集めていたので古書店と言う店とは違うのかも知れない。自分が店を開くときにも古書店とは言わずに古本屋と言っている。新しい本を買うのなら新刊書店で探してなければ注文するのが普通で最近はネットで注文するのが一般的になっている。今は書店の流通サイクルが早いので書店になくて出版社にも在庫がない本やすでに絶版になった本を探して古本屋に行くということになる。しかしそう簡単に探している本が見つかると言うことはなく時間をかけて探すかネットで検索することになる。割とこまめにネットを見ていると案外見つかるようだ。そうなると何故古本屋に行くのかということになるのだ。私がずっと店で模索しているのは棚をどう構成するのかということである。結論は出ていなくて自分の好きな本を並べるということにしているのだが結局それしかないのかもしれない。よく聞くのが古本屋での本との出会いは偶然的なものだと言う言葉である。もちろん良い店ではその確率が高くなり偶発的に色々な本を次々と見つけることになるのだがそれは店主のセンスと努力によるものである。問題はそこなのだがそれが一番悩ましい問題でこれだという答が見つからない。

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2018年

3月

18日

やさしい小冊子

 以前にも何度も書いているように昔からミニコミ誌が好きで見かけると何となく買ってしまうことがある。最近は色々なタイプがありそれに合わせて呼称も変わっている。少部数の手作り感のあるものが好きなのだが勿論内容が自分の好みであることが当然である。最近はその好みの少し範囲が広くなっている。出かけて買うこともネットで知って買うこともある。ここの所集まってきているのが本屋が出しているものや本に関するものがある。そんな中に大阪の女の子が出している「本と本屋とわたしの話」というものがある。ページが打たれていないのではっきりしないが20ページ位の中閉じの小冊子である。何と自分で手作りしていると言うことである。残念ながら健康上の問題から今は休刊している。何人かの執筆者が居るのだが全体を通して本が好きな人たちの思いが伝わってくる本当に優しさに溢れた冊子である。最近知ったので手元には三冊しかないのが残念である。こういったミニコミ関係の冊子などを集めている。今はスペースがないので上手く陳列できていないが並べて置いてみたいものだ。

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2018年

3月

15日

今でも読む漫画

  すでに所有している漫画関係の本は少しずつ処分しているのだが、最近も何冊か漫画を買っている。今更ながらコレクションに加えることはなく、ただ単純に読みたいだけで、読んだ後はどこかの段階で売ってしまうつもりだ。買ったのは次の五冊である。吉本隆明「全マンガ論」(小学館)、これは漫画作品だけを論じた本で、中の岡田史子作品についての部分を読みたかったのだ。次に、津原泰水原作、近藤ようこ作画の「五色の舟」(カドカワ)、これは何で読みたかったのか、誰かに紹介されたのか全く憶えていない。だが近藤ようこ氏の絵がすごい。話も面白いのだが、とにかく良くこれを漫画にしたなと言う気がした。次は、神村篤「暖かい日陰に」(青林工藝社)、私が今最も注目している新しい書き手である。雑誌「アックス」でしか発表していないと思うが、作品数が少ないので自分の読むペースから言うと丁度いい。ただ未だ最初の作品を超えた作品がないような気がする。そして、一ノ関圭「鼻紙写楽」(小学館)、雑誌に年数回連載されていたが、雑誌が廃刊となり、続きは読めないのかと思っていたら、突然単行本でまとめられて出された。それも連載時の順番を入れ替えてあり、加筆もされて面白さが増してきた。さらにその後も、また続きが時々発表されているので期待している。そして、宮谷一彦「ライク・ア・ローリング・ストーン」(フリースタイル)、何と1969年に雑誌に連載されていた作品が一冊にまとめられたものである。おそらくこの作品が単行本になることなどないだろうと思っていたが、好きな人がいたんだと思った。おまけに編集ミスで順番を間違えていて再発行している。無料で交換してくれるのだが、面倒くさいのでそのままにしている。これが出されただけでも十分である。最後は、中西章文「夢の途中」(青林工藝社)という本である。これも良く出したものだと感心している。ネット上で漫画家のはやせ淳氏が中西氏の家族の連絡先を探しているのを見た。中西氏ははやせ氏のアシスタントをしていたのである。だが病死してしまい、その作品集をはやせ氏が出すために探していたのだ。自分のアシスタントをしていた人の作品をまとめると言うのもすごい話ではないか。作品数は十数編程しかないがどれも面白い。この作品が掲載されていた頃は、私はもうこの漫画雑誌は読んでいなかった。だが中西氏の名前は覚えていた。遺作集なのでもうこの後の作品は読むことはできない。ただこんな風に一冊の本がつくられていく経過に感動する。
 

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2018年

3月

08日

本屋が大変

 古本だけではなく新刊書店もけっこうあちこちと見にいっている。特に若い人が始めた本屋は特色があるので見学しながら本も買ってくる。本当に本屋さんが流行っているのだなと実感するほど色々な個性的な店が出来ている。一番の特徴は古本や新刊本の区別なく自分の気に入っている本を並べ店をつくり売っていることだろうか。今までの書店経営は本の流通方法が決まっていて大手の取次会社が総てを仕切っていたと言う印象だったが、そこが今は崩れてきていると言うのが印象的である。加えて小さな流通会社を作り上げている人達もいて今までの疲弊したシステムに代わるものを提示しているのである。勿論今までの仕組みのままでいいと言う人達もいるので最終的にどういうかたちが一番良いのかと言うことはわからないが選択できるかたちを示していることは評価できるのではないだろうか。その上でやはりそれなりに皆さん努力して店を運営している様子が本当によくわかる本である。取り上げられているのは当然頑張って評価されている店である。それでも本を売る書店に対する店なりの色々な思いがあるのがわかる。残念なことに本の中に紹介されている店がすでに閉店している事例が何件かあるのも厳しい事実である。「わたしのブックストア」北條一浩(アスペクト)、「本を売る仕事」長岡義幸(潮出版社)

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