2017年

12月

28日

淡々と本を読むこと

 店を開店する際には古本屋の店主なので日がな一日本を読んでのんびりするのだろうと皆思っていたようだ。これは今でもそう思っている人がかなりの割合でいるのだろうと思う。実際には集中して店で本を読むこともあるがほとんどの場合はのんびりと好きな本を読んでいることはない。趣味的な古書店と言っているのだが実態は本を読むことよりも本棚を眺めていることの方が多い。多分本の好きな人の中には読むよりも集めること眺めることが好きな人が多い筈である。いくら店を構えているとは言ってもとにかくお客さんがこない店なのでこうした趣味的なことが可能なのだ。それでも少しずつ読み進めてはいる。何しろ毎週どこかに出かけては本を抱えて帰ってくる訳だからだんだんと本が溜ってくる。一応読んでみたいと思う本を買ってくるのでとにかく読んでから値段を付けて棚に入れるということを目指している。でも一日本を読んで過ごすことはないのでそのペースは遅い。参考資料や必要があって読まなくてはいけないものもあるのでそのペースは上がらない。今年はどの位の本を読んだのだろうか。そんなことを数える理由もないがもっと色々なものを読んでいきたいと思う。お客さんは色々なことを教えてくれるのであれこれ読みたいものも出てくる。あちこち出かけるとこんな本もあるのかという新しい出会いもある。到底終わることはないので目の前に積み上げられている本を減らしていくしかないということになるだろう。こんな本を読んでみたらどうかと言うものがあったら参考までに教えて下さい。

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2017年

12月

17日

少し心配している

 最近若い人の書く本を意識的に読んでいる。文学作品や評論だけでなく面白そうだと感じるものは何でも構わない。要するに若い人がどんなことを考えているのかがよくわからないからだ。どんな本が売れているのかも気になる所でもある。だからと言って売れそうな本を棚に並べるためではなく単純に知りたいだけである。自分たちはもうここまでで終わりなのだから将来どうなるのだろうと言うことを考えるからだ。

 本を読むことで慣れてしまうこともあるかもしれない。自分が若い時に読んだ本を現在作家の本と比較するとそう思うことがある。読みにくいとかわからないと感じるのは自分が今まで読んで来た本との違いからか単純に興味を持てないからということではないか。若い人の書くものがどう面白いのか理解できるという前提はなく読んでみるのだが、これでいいのというのが大体の感想である。疑問と不安不満が入った印象を受けることが多い。

 今回読んだのは、大学を卒業して就職もしないで好きなことをして生活をしている若者の本である。家を建てない建築家、作家、芸人、そしてタイトルが示すように新政府の総理大臣であると言うのが本人のいい分である。読後感としては非常に不愉快でそれで良いのかということになる。ただこんな次々といいことが起こる訳がないのでこれは本の中の話として受け取るしかない。建築学科を卒業して有名建築家のもとで修業をして、本を何冊も出す文才があり、外国にも進出する有能な人材なのだ。しかし読者はこんな生活が出来たらいいなと路上生活者を目指すのか、会社勤めをしないで総理大臣になるのか、思いつきのいたずら書きを本にして売るのかということなのだ。次の時代は若い人達でつくるのだから心配することはないのだがこれでいいのかと言う気持ちが少しある。「独立国家のつくりかた」坂口恭平(講談社現代新書)

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2017年

12月

08日

普通の生活

 最近急に寒くなったせいなのか体調が安定しなくて身体のあちこちに異変が起きてきた。近くの公立病院に症状が出る度に行っていたがとりあえずは大病と言うことではなさそうなので薬だけを貰ってくるということを繰り返している。病院には大体高齢者がいっぱい並んでいて自分も同様なんだなと自覚した。スポーツ選手のように若い時から身体を鍛えていた訳でもなくきちんと健康管理をしてきた訳でもないので当然のように歳を取った分だけ悪いところも出てくるということか。それでも変わった個所が現れたらその都度不安の種を取り除いていくようにしている。年齢を重ねただけ身体の老化現象は出てくるのでそれは仕方ないことだ。政府は人生100年時代だと言い始めたが豊かな老後を保障してくれる訳でもなく自己責任で老後の生活を面倒見なさいということだろう。そんなに多くの望みはないので普通の生活をおくれれば良い。

2017年

12月

02日

本を読むことと所有しないこと

  たまに近くにある古本のチェーン店を覗きに行く。最近は全体に価格が高くなっているのであまり買えないのだが、この店では一般的にどこにでもあるような本がきちんと揃っているので便利だ。それもきれいな本が多い。そんな訳でたまに寄ってみると何冊かは買ってくることになる。この本も手に取ってパラパラとめくっていたら中に世界文学リストという項目があり、作品一覧が掲載されていたので買ってしまった。本に関する本も面白くて割と簡単に読めるものが多いのでついつい買ってしまう。出版についての本や古本に関する本、色々な書店の本、書評や読書論、様々な切り口から次々と出されるのでかなりの量を持っていると思う。これは作家の本に関するエッセイをまとめたものだが、目次を見ているとつい引き込まれるような見出しが多く載っている。

  著者は学校を中退して高校や大学も卒業していないと言う。知識の元は祖父の蔵書を読むことだった。そして書店、出版社、古書店などに勤務してから作家となった。私が読んだのは有名な「車輪の下」位しか思いだせない。タイトルは「読書術」であり、本に関するエッセイなので読みやすいと思ったがかなり苦労してしまった。これほど真面目に本を読むことが大変な作業だとは考えていなかったからだろうか。記憶に残った部分を書いておきたい。大切な友人と接するように本を読めば本が心を開いてくれる。いくら良質な本を読んでも気晴らしのために読むのであればすぐに忘れてしまい貧しいままである。そのまま真似をすることは出来ないだろうが、新聞は本の危険な敵であるといって読んでいなかったようだ。その代わりにラジオは聞いていたと言う。過去から休むことなく本は創られ続けて増え続けている。読む数ではなくどう読むのかと言うことか。「ヘッセの読書術」ヘルマン・ヘッセ(草思社文庫)

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