2018年

9月

23日

地球星

 芥川賞を受賞した作品は面白く読んだ。それが面白かったので雑誌の記事などを読んだら人物像も面白かったので以前の作品を一篇読んだ。だが、その作品はそんなに面白いとは思わなかった。今回は受賞後の第一作目の長編である。新聞で広告を見たら前作を遥かに超える衝撃作と書かれていたので買ってみた。近くの書店には無かったので東京まで行って買ってきたがすでに二刷目であった。売れているのだと思う。一気に読み終える読みやすい文章なのだが時間の都合で何回かに分けて読んだ。そのせいか割と素直に最後まで読み終えることが出来た。だが、果たして一気に読んだら途中で嫌になったかもしれない。知り合いの古本屋さんはこの人の文体が好きになれないと言っていたが、私はまるで漫画を読んでいるような感覚で読んでしまった。最後はかなりショッキングで破滅的だ。作家仲間からクレイジーと言われているらしいから漫画だと思えばいいかもしれない。作者の個人的な体験や想いが強いのか冷静に社会批判を続けているのかどれも似たような印象を持つ作品だった。そんな風に社会常識への違和感を問題提起しているのかもしれない。内容に関連して言うと、少し前に「LGBTは子どもを産まないため生産性がなく彼らに税金を投入するのはおかしい」ということが言われた。もしかしたらこれから人工授精の研究が進められ、結婚とか家族とかに関係なく子どもが生まれる生産性の高い社会が出来るかもしれない。それは今の常識には反する社会かもしれないが、まだ保守的な価値観がはびこる現代に対して逆に新しい価値観を提示しているのだと言われたらどう応えたらいいのだろうか。「地球星人」村田沙耶香(新潮社)

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2018年

9月

16日

ミニコミは楽しい

 いま古本の世界には色々な参加の方法がある。昔ながらの古書店を親の代から引き継いだ後継者やインターネットで古本を売る人、古本を文化と考えて店を持つ人、そして趣味的に一箱古本市に参加する人などである。この著者は一箱古本市を提唱して取り組んできた人でもあり、編集者として色々なミニコミを紹介してきた人でもある。今回はそのミニコミ誌を出している人たちにインタビューしたものをまとめた本である。今までも出版など本に関する本を何冊か出しているが、ミニコミ誌については興味を持っているのでつい買ってしまった。若い時からミニコミ誌を作っている変わった人達が登場する。それぞれ編集者になったり書き手になったり出版社を立ち上げたりとそのまま関連するような仕事に就いている。やはり発行物に対する拘りがあって出し続けているのだろう。それは自分も同様で書いたり作ったりするのが面白くて色々なものを出してきている。自己表現の場所から、地域における運動として、本を作ることが有効なのだと言えるのかも知れない。読んでいて関係ないことがずっと気になっていた。この表紙の手触りがすごく良いのだ。今度これを使ってみたいと思う。「編む人」南陀楼綾繁(ビレッジプレス)

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2018年

9月

07日

人間・詩人

 割とすぐに読み終えたのだが何とも不思議な感慨を覚えた。黒田三郎という詩人を自分は知らなかったようだ。詩人としての名前は知っていたが詩集をよく読んだことがなかった。そして最近復刻された「小さなユリと」という詩集を読んで、自分の小さな娘と暮らす様日々の子を描いた詩にとても感動した。こんな素直なわかりやすい言葉で詩をかける才能に驚いた。だが今回この本で詩人の生活実態はかなり違ったものであったということがわかる。NHKの管理職で酒好きの詩人であったということもわかった。すぐに退職したのかと思ったら20年以上も勤め上げていたようだ。この本は同じ職員だったという夫人が書いた黒田三郎の実像を描いた本である。赤裸々に書かれた普段の生活を覗き見るような感じなので少し驚いてしまったのだ。後半は二人の手紙のやり取りである。知らなかった色々な事実がわかってきてしまうのだ。わかってしまうということが問題である。詩を読むことは詩人の生活を知りたいこととは違う。作品の中からその人を想像することはできるが、それ以上を知りたいとは思わない。以前は夫人へのラブレターを詩集に仕立て上げたこともあるようだ。もちろんそれは詩集として成立するだろう。この本はその夫人が書いたものだ。実はこの人がなかなかの人物であると紹介されて読んでみたのだ。詩人ではなかったようだが、文才もあるようでおしゃれで軽妙なな読みやすい文章である。そこから見えるのは妻としても個人としても良く出来た人のようだ。多分実際に周りから見ている人の目にはもっとわかりやすいのかも知れない。夫人の人柄は多くの回りの人達に好感を持って受け入れられていたようだ。それがそのまま感じられる一冊であるが、愛し合っていた二人の姿がそのまま伝わってくるので照れくささも感じた。「人間・黒田三郎」黒田光子(思潮社)

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2018年

9月

02日

日曜日の楽しみ

 新聞を取るのを止めたので日曜日は外で新聞を買っている。自分は毎日新聞を買って読んでいるので困らないが、家族からはテレビやラジオの番組表を見るために日曜日の新聞を買ってきてくれと頼まれる。一週間分のそれを見ながらどの番組を見るのかチェックしているのだ。ニュースはテレビで見る程度なので新聞はあまり見ることがなかったが、唯一読んでいるのが日曜日に掲載される書評欄だ。色々な人が回り持ちで原稿を書いているのだろうと思われるが、皆さん文章が上手いなと感心してしまう。まったくつい買って読んでみたくなるような記事が多いのだ。それを我慢して家族が読み終わった新聞記事をスクラップしておく。後でもう一度読んでみて、やはり読んでみたいなと思わせるようなものをたまに買ってみるのだ。当然のように評者とは感想が違うので読むとそれほどでもなかったと思う本もある。でも新聞としてはそこまで持っていければ良いのだ。今日も一冊良い本が紹介されていたがどうしようか。

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